介護は、する側もされる側も、我慢が積み重なっては長く続けられません。介護を受ける人が本人らしく過ごせるようにサポートしながら、家族も笑顔でいるために、ここでは介助の仕方について紹介します。正しい介助方法で、少しでも介護の負担を軽減しましょう。
食事介助
食事介助は、要介護状態が重度になるほど時間がかかり、忍耐が必要になります。
しかし高齢者にとって「食べること」は、日々の楽しみや生きがいをもたらす点からも、とても大切なことです。愛情をもって接しましょう。
食事介助をする場合は、まずどこに介助が必要かを見極めます。
飲み込みや咀しゃくなど、食べることそのものに問題がある場合は、食材や調理法を工夫します。食べる様子や食べた量、食べ残した献立を観察しているうちに、食べられる食事がわかってきます。
食べ物を口に運ぶまでの動作に問題がある場合は、自助具を利用します。介助する側は、食べる姿勢が崩れないようサポートします。
食べ物が気管に入るのを防ぐには、食べる姿勢がとても大切です。
テーブルに対して直角に腰かけ、首をやや前傾させた姿勢にするとむせにくいとされています。
そのほか、姿勢が安定しているか、背中が横に傾いていないか、テーブルと腹部の距離は適切か、足は両足とも床についているかを確認します。姿勢が不安定な場合は、いすの背中や腰まわりにクッションなどを入れて安定させます。
自力で食べられない場合は、介助者は隣に座り、スプーンで一口ずつ口に運んであげます。
相手のペースにあわせ、必ず飲み込んだことを確認してから次の一口を運びます。途中で汁物を飲んでもらうことも忘れずに。
口に運ぶ前には、「おいしそうですね」「次はどれがいいですか?」など、食べる意欲を引き出すような声かけをしながら介助をするとよいでしょう。
入浴介助
入浴は、からだを清潔に保つのはもちろん、リラックスしたり血流をよくする効果があるため、できるだけ毎日入ってもらいましょう。
介助の際には、まず浴室周辺の環境を整えます。
脱衣所や浴室はあらかじめ温めておき、洗い場には、滑りにくく座りやすいいすを用意します。床には滑り止めマットを敷き、浴槽の出入りには手すりをつけると安全です。
浴槽をまたいで入ることが困難な場合には、浴槽のヘリに座って回転させるボードや浴槽用リフトなどが便利です。
手すりの位置やボードの使い方などは、介護用品を扱っている店の福祉用具専門相談員など、専門家の指示に従いましょう。
入浴をいやがったり、自宅での入浴が困難な場合は、介護保険サービスの通所介護で入浴を頼むこともできます。
排泄介助
下の世話は、誰しもされたくありません。介護が必要な状態になってもそれは同じです。
本人の尊厳を保つためにも、多少失禁があっても、排泄は最後まで自分でできるようにしたいもの。介助は、下着の上げ下ろしなど、必要最低限にとどめるようにしましょう。
排泄介助をする際には、まず介助しやすい環境かどうかを確認します。トイレに十分なスペースがない場合は、脱衣所等で下着を下げ、トイレまで誘導します。
ひとりで立ち上がるのが困難になってきたら、手すりや便器に取り付ける肘掛け、立ち上がりをサポートするリフトなどを利用すると便利です。自分で下着の上げ下ろしができる方でも、不安定な姿勢をサポートするための縦型手すりの設置をおすすめします。
尿意を感じてからトイレまで間に合わない場合は、居室にポータブルトイレを置いたり、差し込み式の便器を利用しましょう。ポータブルトイレを部屋に置く場合は、他の人の目につかないよう、家具や衝立などで目隠しする配慮も忘れずに。
人手がない場合は、尿取りパッドやパンツ式おむつなどの排泄用品の利用も検討します。
整容
洗面や歯磨き、髭剃り、髪の毛を整えるなど、身だしなみを整えることを整容といいます。
その人の習慣を大きく変えることなく、気持ちよく身だしなみを整えられるようにしましょう。すべてやってあげるのではなく、補助具などを使いながら、できることは自身でしてもらうほうが、自立支援につながります。
ベッド上で行う場合は、必要な道具をすべて用意し、ベッドの背を上げ、防水のエプロンなどを胸元にかけて行うとよいでしょう。
また普段から蒸しタオルを用意しておき、顔や口元などを拭くと清潔が保てます。
移動介助
【車いすを利用している場合】
ベッドから車いすへ、車いすからトイレへなど、移乗(乗り移る)介助でありがちなのが、脇の下に両手を入れて、上半身を抱きかかえる方法です。しかしこれは腰を痛める原因になります。
移乗介助は、からだの動きを理解し、介助される側の人の力も借りて、呼吸を合わせて行うことで、余計な力をかけずにスムーズに行うことができます。
看護師や介護士に聞いて、プロの技を教えてもらいましょう。
【杖や歩行器を利用している場合】
杖は基本的に健康な側で持ち、「杖→健康な足→障害のある足」の順で歩行します。
介助者は障害のある側に立ち、前や後ろに倒れそうになったときに、すぐに手を伸ばせる位置につきます。また、階段では、昇り階段のときは一歩後ろで、下り階段のときは一歩前から介助します。
体位交換
からだの向きを変えることを体位交換といいます。
健康な人は、寝ている間に無意識に何度も寝返りをうちますが、からだに障害がある場合は、自分で寝返りをうつことができません。
寝返りをうたないでいると、骨の出っ張ったところなどにいつも圧がかかって床ずれができ、ひどいときには感染症を招くこともあります。自力で寝返りをうてない方には、介助によって体の向きを換えてあげましょう。
体位交換は、横向きにしたり、半分起き上がったような姿勢にしたりと、さまざまな方法があります。また福祉用具のなかには、寝ているときの体圧を分散させる、床ずれ防止マットなどもあります。