介護技術について

日常の介護の方法

介護は日常的に行うことです。そのため、介護する側も、される側も、我慢があっては積み重なってストレスになってしまいます。その方がその方らしく過ごすために、そして支える家族も笑顔でいるために、ここでは介護の負担を減らせる技術について紹介します。

介護の世界では、食事・入浴・排泄の介助を、俗に三大介助といいます。いずれも毎日行わなければならないもので、これらの介助を受ける側がいかに快適に過ごせ、また介助する側の負担も少なくできるかが、介助技術の腕の見せどころです。

食事介助

食事介助は、重度になればなるほど時間がかかり忍耐力の要る作業です。しかし高齢者にとって、「食べること」は日々の楽しみや生きがいをもたらす点からも、非常に重要です。介助する側も食べてもらえる幸せをかみ締めながら愛情をもって接しましょう。

食事の介助をする場合は、まずなんのために介助が必要かを見極めます。飲み込みや咀しゃくなど、食べることそのものに問題がある場合は、調理法や食事内容に気をつけます。身体機能に問題がある場合は、自助具の利用や食べる姿勢にも配慮して介助します。また、毎食ごと、食べた量や食べ残した献立を観察すると、自然と食べやすい、食べられる食事を用意できるようになります。

食べ物が気管に入ってしまう誤嚥を防ぐには、食べる姿勢も重要です。テーブルに対して直角に腰かけ、首はやや前傾している姿勢が最もムセにくいとされています。ほかにも安定した姿勢を取れているか、背中が左右に曲がっていないか、テーブルと腹部の距離は適切か、足は両足とも床に着いているかを確認します。姿勢が不安定な場合は、イスの背中や腰まわりにクッションなどを入れて安定させます。

食事介助握力がなく箸やスプーンがもてない方のための便利な自助具があります。食べこぼしても叱るようなことはせず、防水エプロンなどを利用し、まずは自分で食べられることをほめてあげましょう。
自力で食べられない場合は、介助者は隣に座り、小片にした食事をスプーンで一口ずつ口に運びます。相手のペースにあわせ、ちゃんと飲み込んだことを確認してから次の一口を運びます。途中で何度か、汁物を飲んでもらうことも忘れずに。施設では、食事介助の必要な方には、都度「おいしそうですよ」「次はどれがいいですか?」など、食べる意欲を引き出すような声かけを行いながら、介助を行っています。

入浴介助

入浴は清潔を保つ以外にも、リラックスしたり体の循環をよくするなどの効果があるため、健康上問題がなければ、毎日入っていただきたいものです。
介助の際には、まず浴室等周辺の環境を整えましょう。

脱衣所や浴室はあらかじめ温めておき、洗い場には滑りにくく座りやすいいすを用意します。滑りやすい床には滑り止めマットなどを用意し、浴槽の出入りには手すりを利用すると便利です。浴槽をまたいで入ることが困難な場合は、浴槽のヘリに座って回転させるボードや浴槽用リフトなど、便利な用具が気分転換することも、入浴の目的になります。
手すりの位置やバスボードの使い方などは、看護師やヘルパーなどのほか、介護用品を扱っている店の福祉用具専門相談員など、専門家の指示を仰ぎましょう。

入浴介助要介護認定を受けている方で、入浴をいやがったり家での入浴が困難な場合は、介護保険で通所介護を利用することができます。ケアマネジャーに相談しましょう。

排泄介助

下の世話、誰もがされたくない介助の筆頭です。多少失禁などがあっても、排泄は最後まで自分でできることは自分でできるよう工夫し、トイレでの下着の上げ下ろしなど、どうしても介助が必要な場合も、必要最小限に手早く行うようにしましょう。
ポータブルトイレなどを部屋に置く場合は、他の人の目につかないよう、家具や衝立などで目隠しする配慮も忘れずに。

排泄・排尿の回数やその状態を確認することは、健康管理の面からも重要ですが、疾患により異なるので、正常な状態を医師や看護師に確認し、異常がみられた場合は相談しましょう。頻尿、あるいはその逆にトイレの回数が少なすぎる場合も、改善方法について相談しましょう。

入浴介助排泄介助の際には、まず介助しやすい環境かどうかを確認します。二人同時に入れない場合は、脱衣所等で下着を下げ、トイレまで誘導します。一人での立ち上がりが困難になってきたら、手すりや便器に取り付ける肘掛け、立ち上がりをサポートするリフトなどを利用すると便利です。一人で下着の上げ下ろしができる方でも、不安定な姿勢をサポートするための縦型手すりの設置をおすすめします。

尿意を感じてからトイレまで間に合わない場合は、居室にポータブルトイレを置いたり、差し込み式の便器を利用しましょう。人手がない場合は、尿取りパッドやパンツ式おむつなどの排泄用品の利用も検討しましょう。

整容

洗面や歯磨き、髭剃り、髪の毛を整えるなど、身だしなみを整えることを整容といいます。
その人が行っていた習慣を大きく変えることなく、気持ちよく身だしなみを整えられるようにします。すべてやってあげるのではなく、便利な補助具などを使って、自分で出来る部分は自分でやっていただくほうが、自立支援につながります。
ベッド上で行う場合は、必要な道具をすべて用意し、ベッドの背を上げ、防水のエプロンなどを胸元にかけて行うとよいでしょう。常に熱すぎない蒸しタオルを用意し、顔や口元などを拭くと清潔が保てます。

移動介助

体の半身にまひがある「片まひ」の方や、関節系の病気で歩行に障害が出てきた方の介助は、非常に重要です。

車いすを利用している場合

車いすベッドから車いすへ、車いすからトイレへなど、頻繁に移乗(乗り移る)のための介助が必要となります。ありがちなのが脇の下に両手を入れて、上半身を抱きかかえるようにする介助ですが、これは腰を痛める要因になります。
こうした移乗介助には、人の体の動きをよく理解し、介助される側の人の力も借りて、呼吸を合わせて行うことで、余分な力をかけずにスムーズに行うことができます。
看護師や介護士がプロの技を教えてくれるでしょう。

杖や歩行器を利用している場合

車いす杖は基本的に健康な側で持ち、杖→健康な足→障害のある足の順で歩行します。
介助する人は障害のある側に立ち、前や後ろに倒れそうになったときに、すぐに手を出せる位置につきます。また、階段では、昇り階段のときは一歩後ろで、下り階段のときは一歩前から介助します。

体位交換

体位交換とは体の向きを変えることを言います。健康な方は寝ている間に無意識に何度も寝返りをうちますが、身体に障害がある場合など、自分で寝返りをうつことができません。そうなると骨の出っ張ったところなど、いつも決まった場所だけに圧がかかり、床ずれが生じる恐れがあり、感染症など重篤な疾病を引き起こす原因となります。そのため、自分で寝返りをうてない方には、介助によって体の向きを換えてあげる必要があります。

車いす福祉用具のなかには、寝ているときの体圧を分散させてくれる、床ずれ防止マットなどもありますが、体位交換は、横向きにしたり、半分起き上がったような形にしたりと、さまざまな方法があります。体がずり落ちたり、仰向き姿勢に戻らないようにするためには、枕やバスタオルを枕状にしたものをクッション代わりにして支えます。

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