高齢者の感染症対策

体力が衰えた高齢者がかかりやすい感染症には、しっかりとした予防策が必須です。

流行の季節に多く耳にするインフルエンザやノロウィルスの知識を持ち、正しい予防策を把握しておきましょう。

感染するのは「ウイルス」?それとも「細菌」?

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そもそも、ウイルスと細菌の違いを、皆さんはご存知ですか?ウイルスはヒトや動物などの生体の細胞内で増殖するもので、抗生物質が効きません。代表的なものに、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、帯状疱疹ウイルス、肝炎ウイルスなどがあります。

一方、細菌は、それ自体が細胞をもつ単細胞生物で、個々の細胞に適した環境で増殖します。多くの場合、抗生物質で治りますが、抗生物質に対して耐性を持つ耐性菌も出現しています。


代表的なものに結核菌、サルモネラ菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌などがあります。毎年死者も出る腸管出血性大腸菌O-157は大腸菌の仲間です。

感染症対策の基本は「感染させない」「感染しても発症させない」ことです。具体的には、1)病原体を持ち込まない、2)病原体を広げない、3)病原体を持ち出さない。この3つがポイントとなります。

健康な人に感染を起こすことは少ない病原体も、感染抵抗性の低下している要介護高齢者では、感染後、発症しやすくなります。特に高齢者介護施設などでは、接触感染による集団感染の実例も多い感染症(MRSA、緑膿菌など)には注意が必要です。

「利用者は在宅だから関係ない」と侮ってはいけません。デイサービスやショートステイ先からもらってくることも多く、また、ヘルパーや家族など、本人以外の第三者から感染する場合も多いのです。

◆主な感染経路と原因微生物
感染経路 特長 主な原因微生物
空気感染 咳、くしゃみなどで、飛沫核(ひまつかく)5ミクロンメートル以下として伝播(でんぱ)する。長時間空気中に浮遊するので、空気の流れにより飛散するため、空調対策が必要。 結核菌、麻しんウイルス、水痘ウイルスなど
飛沫感染 咳、くしゃみ、会話などで感染する。飛沫粒子5ミクロンメートル以上は1メートル以内に床に落下し、空中を浮遊し続けることはないため、空調対策は不要。 インフルエンザウイルス、マイコプラズマ肺炎、百日咳、風疹ウイルス、流行性耳下腺炎、レジオネラなど
接触感染
(経口感染を含む)
手指、食品、器具を介して伝播する、もっとも頻度の高い伝播経路。感染源に直接接した手や体などにより起こる直接接触感染と、汚染された食品、水、薬剤、器具などとの接触により起こる間接接触感染がある。 ノロウイルス、ロタウイルス、ヘルペス、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、腸管出血性大腸菌O-157、赤痢、緑膿菌など

感染予防の国際基準「スタンダードプレコーション」

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「スタンダードプレコーション」という単語を、聞いたことがありますか?これはアメリカの国立疾病予防センターが提唱している院内感染を防ぐための「標準的予防策」で、現在では世界中の医療現場で標準的に用いられているほか、高齢者介護施設の現場でも取り入れているところが増えてきました。

スタンダードプレコーションの基本的考え方は「すべての患者の血液、体液、分泌物、排泄物、創傷皮膚、粘膜などは、感染する危険性があるものとして取り扱わなければならない」というもので、先に紹介した、病原菌を「持ち込まない・広げない・持ち出さない」の基本となるものです。

具体的には、手洗いに始まり、マスク、手袋、器具、リネン類などの取り扱いが細かく標準化されています。在宅でこれらすべてを徹底することは不可能ですが、ここでは、誰にでも簡単にできる「手洗い」「うがい」について解説します。

感染症予防の基本は、「手洗い」と「うがい」

水だけでの手洗いでは病原体を除去することは難しいため、流水と石けんの使用が前提となります。石けんは、固形石けんから感染する例もあるため、できればワンプッシュで1回分が出てくるポンプタイプの液体石けんがよいでしょう。

しかし、外出先では必ずしも水と石けんのある環境ばかりではないため、殺菌効果のあるアルコール入りウエットティッシュを常備するとよいでしょう。新型インフルエンザが猛威を振るった2009年以降は、公共施設の入り口付近などには、速乾性の手指消毒薬を常備するところが増えているため、外出先でもこまめに手指を消毒するとよいでしょう。

一方、うがいは細菌繁殖の原因となる食べかすの排除という洗浄効果のほか、病原体の定着を阻害し、細菌の数を確実に減らす効果があります。外出から戻ったときや、咳やタンの多い人と接した後は、必ずうがいを行いましょう。

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うがいをするときには、60CC程度の水(コップ3分の1程度)を3回に分けて行うイメージで、1回目は強めに行い食べかすなどを出し、2~3回目はのどの奥まで届くように上を向いて、15秒程度行います。

寝たきりなどで、自分でうがいができない人も、口腔ケア用のウエットティッシュなどを上手に利用し、常に口中を清潔に保つようにしましょう。

また、インフルエンザが流行している時期や、病院・病棟では、マスクの着用も心がけたいものです。

→次ページへ【流行する「インフルエンザ」と「ノロウイルス」】

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