食事対策

体力や免疫力が落ちてくる高齢者。それを少しでも食い止めるためには食事からきちんと栄養を取ることが大切です。保存食や乾物、便利なレトルトなどを上手に利用し、飽きのこない食事を用意しましょう。

しかし、高齢になると咀しゃく力や飲み込む力(嚥下力)が低下し、思うように普通の食事が楽しめなくなります。そんな高齢者の「食」について、詳しく紹介します。

「咀しゃく」と「嚥下」の低下で食欲不振に

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口から食べることは、栄養を補給するという目的のためだけでなく、味覚・臭覚・視覚・聴覚・触覚を刺激して、生きる喜びや食べる楽しみ与えてくれる、とても重要な行動です。

しかし高齢になると、咀しゃくする力や飲み込む力が低下し、食事のスピードが遅くなったり、食べ残しが多くなるなど、食事面の不安が出てきます。

そこで、食材を小さく切ったり、軟らかくなるまで火を通したりと、さまざまに工夫して献立を調えますが、食べ残しなどの原因が「咀しゃく」にあるのか、「嚥下」にあるのか、またはその両方とも低下しているのかを把握する必要があります。

咀しゃくが弱くなってくると、固いものや1片が大きいもの、繊維の多い野菜などを噛めなくなり、こうした食材を避けるようになります。また、こんにゃくやたこ、かまぼこのように弾力性のあるものも、うまく噛み切ることができなくなります。

一方、飲み込む力が弱くなってくると、のりやわかめなどのように薄くヒラヒラしたものは、のどの奥や口蓋(こうがい・口の中の上壁)に張りついてしまい、最悪、気管の入り口を塞いで窒息する危険性があります。

さらに、おから、カステラ、クッキーなどのぽろぽろしたものも、口のなかでかたまりにならないままのどの奥へ運ばれ、気管に入ると強いむせを引き起こします。さらに、水などのサラサラした液体は、もっとも誤嚥を引き起こしやすいため、普段の水分摂取にもとろみ剤をつかってとろみをつけるなどの工夫が必要となります。

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入れ歯や欠損歯のある方は、ゴマやパン粉など、小さな粒状のものが入れ歯の裏側や歯間にはさまってしまうことも。薬味の青ネギなども、小さすぎると口中にとどまったままで不快な思いをします。

また、咀しゃくや嚥下に問題はなくても、すっぱいもの、辛いものも、高齢者には刺激が強すぎてむせを引き起こすことがあります。一度むせて苦しい思いをすると、箸が進まなくなるものです。

このように、高齢者は「普通の食事」のハードルがどんどん高くなって、食欲が落ちたり、むせやすくなっていくのです。ただでさえ食事量が減ってくるのに、食事を楽しめなくなると一気に栄養障害に陥る可能性があります。

市販品も上手に取り入れ、省力化

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下の表にあるような食事を一から手作りするにはミキサーやうらごし器を使わなければならず、手間も時間もかかるもの。すべて最初から家庭で手作りするのは大変です。そこで、便利な市販の介護食を利用したり、家族と一緒の献立に手を加える方法で献立を調えましょう。

市販の介護食には、ユニバーサルデザインフードの区分表によって噛む力・飲み込む力の目安、かたさの目安が表記されているので、食べる人の状態に合った商品を選ぶことができます。


◆高齢者が飲み込みやすい食事形態と食事の具体例
飲み込みやすいもの 食事の具体例
  • 適度な粘度があり、噛むとペースト状の食塊をつくりやすいもの
  • 性状が均一で咀しゃくしやすいもの
  • ゼラチン、くず、片栗粉などで固めたり、粘度を与えたもの
  • 無味よりわずかな酸味や甘みのあるもの
  • のどの奥の粘膜に触れたときに嚥下反射が起きやすいのは冷たいもの。口当たりがよいのは10~15度くらいのもの。
  • デザート系
    プリンやムース、牛乳やジュースのゼリー、ヨーグルト、アイスクリームなど。
  • 汁物系
    クリームスープ、シチューなど。
  • フルーツ
    バナナ、桃、マンゴーなどをつぶしたもの。りんごや柿、ブドウなどをコンポートにしたもの。
  • おかず
    茶碗蒸し、卵豆腐、ごま豆腐、とろろなど。魚は骨や皮を除いてすり身状に。野菜は繊維に直角に包丁を入れやわらかく火を通す。煮物などはくずをかけて飲み込みやすく。
  • 主食
    おかゆは3分がゆ、5分がゆなど。パンは食パンを小さくちぎってパンがゆに。

離乳食を作った経験のある方ならおわかりかもしれませんが、煮物や汁物なら、味付け前に一人分を寄り分けて、さらに小さく切ったり、軟らかくなるまで火を通してから高齢者向けの味付けをします。また、おかゆは大きめの湯飲みに水と米ひとつかみを入れ、普通の白飯を炊くときに一緒に炊飯器に入れれば、一人分のおかゆができあがります。

発熱の後などに極端に食欲が落ちた場合は、液状の高カロリー栄養食(流動食)も積極的に利用します。流動食といっても、現在はフルーツ味など飲みやすく調整されているものも多いので、脱水予防の経口補水液とともに、冷蔵庫に常備しておくと良いでしょう。

また、好き嫌いが多いなどでどうしても不足しがちなビタミンなどの栄養素は、ビタミン剤や健康補助食品から摂取してもかまいませんが、要介護高齢者は日常的に薬を飲んでいる方が多いので、飲み合わせなどに問題がないか、念のためにかかりつけ医に相談しましょう。

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