大阪市立大学は、3月28日、同大大学院医学研究科の富山貴美准教授(脳神経科学)らの研究グループが、結核やハンセン病などの治療薬のリファンピシンに認知症を予防する広い作用があることを世界で初めて突きとめたと発表した。
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脳の神経細胞の異常が原因で起こる「変性性認知症」には、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症などがあり、それぞれアミロイドβ、タウ、αシヌクレインというタンパク質が脳内でオリゴマーと呼ばれる分子集合体を形成し、神経細胞の機能を障害することで発症すると考えられている。
研究グループ代表の富山准教授は、1994年にリファンピシンにアミロイドβの凝集を抑える作用があることを報告している。
認知症に広く有効な予防薬の開発を目標にした今回の研究では、まず、アミロイドβの凝集を抑えると報告されている5つの経口摂取可能な低分子化合物を選び、アミロイドβオリゴマーが内部に蓄積する細胞の培養系に加えてその効果を調べた。その結果、リファンピシンが最も強くアミロイドβオリゴマーの細胞内蓄積を抑えることがわかった。
次に、アミロイドβ、タウ、αシヌクレインのオリゴマー形成に対するリファンピシンの作用を試験管内で調べた。その結果、リファンピシンはこれらのタンパク質のオリゴマー形成をすべて抑制することがわかり、リファンピシンが、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症のいずれにも効く可能性を示した。
リファンピシンの内服による効果を調べるため、アルツハイマー病や前頭側頭型認知症のモデルマウスに1ヵ月間経口投与した。その結果、アミロイドβオリゴマーが細胞内に蓄積するタイプのアルツハイマー病モデルマウスでは、脳のアミロイドβオリゴマーが減少し、 シナプスが回復して記憶障害も改善した。
また、タウが過剰にリン酸化され、タウオリゴマーが細胞内に蓄積する前頭側頭型認知症モデルマウスでは、タウオリゴマー、リン酸化タウがともに減少し、シナプスが回復して記憶障害も改善した。
これらのことにより、リファンピシンがさまざまな認知症を予防する効果が示唆された。
リファンピシンは古くからある薬であるため、副作用に関する情報も蓄積されており、ジェネリック医薬品として安価に供給されていることから、一部の患者で問題となる肝障害や薬物相互作用といった副作用をクリアできれば、未だ有効な治療法がない認知症の有望な予防薬となる可能性があるという。
◎大阪市立大学 プレスリリース
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