4月24日、ノバルティスファーマ株式会社主催のメディアフォーラム「“記憶障害”だけではない、アルツハイマー型認知症」が開かれた。
まず、同社担当者より、軽度から中度のアルツハイマー型認知症の家族を介護している介護者を対象に、同社が行ったインターネット調査の結果が紹介された。
それによると、認知症介護にかかわる前に知っていた症状は「記憶障害」(91.7%)が最も多く、「生活障害(ADL)障害」は約7割だった。
ただし、介護をするなかで「生活障害」に「とてもストレスを感じる」人は42.4%、「ややストレスを感じる」も加えると9割超と、介護負担を感じていた。なかでも最も大きなストレスとなるのが「単純な会話や指示が理解できない」こと。
アルツハイマー型認知症の治療目標としては、「『生活する』機能を維持・改善」することが最も多く求められていた(54.3%)。ちなみに、「『記憶する』機能を維持・改善」することは18.0%。
続いて、香川大学医学部精神神経医学の中村祐氏は、「アルツハイマー型認知症における生活障害(ADL)障害」について、レクチャーを行った。
中村祐氏(香川大学医学部精神神経医学)
まず、「認知症とは?」について説明。
・2011年に診断基準が見直され、従来は物忘れがあることが前提だったが、多面的評価に変わった
・生活障害はアルツハイマー型認知症の中核症状の一つである
・生活障害は、その人の生活スタイルによって多種多様
・物忘れだけで認知症を疑い、来院する人は少ない。受診動機になっていない
・認知機能の低下に伴い、手段的日常生活動作(IADL)も低下。なかでも服薬管理能力が低下しやすい
といったことを説明した上で、日常生活の障害が振興すると、介護者の負担・ストレスも増えると強調。
そして、ノバルティスファーマが販売している、貼るタイプのアルツハイマー型認知症治療薬リバスチグミンパッチについて説明した。
リバスチグミンは、1997年からカプセル剤として世界80ヶ国以上で販売されていたものの、効果はある一方で、副作用が強く、日本では承認されていなかった。その後、カプセル剤に比べて副作用が有意に少ないパッチ剤が開発され、2007年から世界80ヶ国以上で販売。日本でも、昨年、販売開始された。
パッチ剤の場合、皮膚を通して薬剤が徐々に吸収されるため、血中濃度の急激な上昇を抑えられ、悪心、嘔吐といった消化器症状が軽減される。また、添付の有無、投与量を目で見て確認できるため、服薬管理もより容易だ。
中村氏は、リバスチグミンパッチに関する国内の臨床試験結果もいくつか紹介。たとえば、ADLの評価に関しては、リバスチグミンパッチ9mg、リバスチグミンパッチ18mgを使用した場合とプラセボ群で、24週までの変化を比較すると、プラセボ群に比べて、有意に改善していた。中村氏によると、「ADLで有意さを出せた薬は他にない」という。
衛生、着替え、排泄、摂食、食事の用意、電話、外出、金銭の取り扱い、服用、余暇と家事という日常生活における能力のなかでも、特に、外出と服用に改善が見られた。
中村氏は、講演の最後、「頭がはっきりしている間に認知症といわれたらどうしますか?」というアンケートを行ったところ、「今までと変わらず生活する」と回答した人が最も多かったことを紹介。特別なことをするのではなく、「生活機能を1日でも長く維持することが重要」と締めくくった。
■関連記事
・「物忘れ外来」受診者の6割はアルツハイマー型――認知症シンポレポ(1)
・「アリセプト」のジェネリック品続々登場、その数約30社!