2021年度の介護報酬の改定が1日に行われた。新型コロナの混乱が続く中、改定に伴う運営基準の改正は、全ての介護サービス事業者に対して、感染症の発生やまん延に備えた対策を講じることを義務付けた。居宅介護支援関連では、利用者への新たな説明義務として、ケアプランに位置付けたサービスの割合が加わるなど、ケアマネジャーの実務への影響も大きい。これだけは知っておきたい改定のポイントをまとめた。
前述した通り、今回の改定に伴い、ケアプランに位置付けたサービスの割合を利用者に説明することが、新たにケアマネの義務となった。
■改定前の契約者は「次のプラン見直し時」
対象となるのは、▽訪問介護▽通所介護(地域密着型)▽福祉用具貸与―で、直近6カ月(3月~8月、または9月~翌2月)に作成されたケアプランのうち、各サービスが位置付けられたケアプランの割合と、期間中の各サービスの提供回数に占める同一事業者の割合(上位3位まで)について、利用者に文書と口頭で説明し、同意を得る必要がある。
改定前の今年3月以前に契約した利用者について、厚生労働省は「次のケアプランの見直し時に説明を行うことが望ましい」とし、今月中に新たに契約する利用者に関しては、サービス割合の集計などが難しい場合、「5月以降のモニタリング等の際に説明を行うことで差し支えない」としている。
■“サービス利用無し”も基本報酬が算定可に
看取り期のケアマネの仕事を評価する見直しも行われた。改定前、ケアマネは退院・退所後の居宅サービスの利用に向けてケアマネジメント業務を行っても、サービスの利用が始まらなければ、介護報酬を算定することはできなかった。
改定後は、モニタリングやサービス担当者会議の開催といった業務を行った上で、請求のための書類などを準備していれば、利用者が死亡してサービスの利用につながらなかった場合でも、居宅介護支援費を算定できるようになった。
■大規模デイなどの給付管理がより複雑に
区分支給限度基準額(限度額)の管理方法も変わった。通所介護と通所リハビリに関しては、大規模型の利用者も、通常規模型の単位数を使用することになったほか、同一建物減算が適用された利用者の限度額に関しては、通所系と多機能系のサービスについても、減算適用前の単位数を用いることになった。いずれも、利用者間の公平性を確保することが目的だ。
■感染症対策、全サービス事業者に義務化
改定に伴う運営基準の改正では、全ての介護サービス事業者に対して、(1)感染症対策の強化(2)業務継続に向けた取り組みの強化(3)ハラスメント対策の強化(4)会議や多職種連携におけるICTの活用(5)利用者への説明・同意等に係る見直し(6)記録の保存等に係る見直し(7)運営規程等の掲示に係る見直し(8)高齢者虐待防止の推進(9)介護保険の新たなデータベース「LIFE」の収集・活用とPDCAサイクルの推進―を義務付けた。
このうち(1)(2)(8)については、委員会の開催や研修の実施などを義務付けているため、3年の経過措置期間が設けられているが、早期の対応が求められるだろう。
(1)に関しては、▽感染対策委員会の設置▽平常時の対策などを定めた指針(ガイドライン)の整備▽研修と訓練(シミュレーション)の実施―を求めているが、厚労省は「他のサービス事業者との連携等により行うことも差し支えない」としている。また、居宅介護支援事業所の職員が1人の場合、ガイドラインを整備しておけば、感染対策委員会を「開催しないことも差し支えない」としている。
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■注目の「LIFE」、居宅介護支援はどうなる?
(9)については、「LIFE」 へのデータ提出と活用を図るため、特別養護老人ホームや介護老人保健施設など多くのサービスで加算が設けられているが、居宅介護支援と訪問系サービスには無い。
昨年末に社会保障審議会介護給付費分科会がまとめた意見書では、居宅介護支援事業所について「各利用者のデータ及びフィードバック情報のケアマネジメントへの活用を推奨する」としており、同省は今年度、居宅介護支援事業所での活用の可能性を探る調査を実施する方針。