特定事業所加算をケアマネ連携のハブに―日医・江澤常任理事インタビュー

介護医療福祉の垣根を超えた地域共生社会の実現に向け、多職種連携の重要性は今後さらに高まる。高齢化がピークを迎え、現役世代が激減する「2040年問題」が訪れる20年後、ケアマネジャーはどのような役割を担うべきなのか。そして、かかりつけ医との関係は―。日本医師会で介護保険制度や障がい福祉サービスなどを担当する江澤和彦常任理事に話を聞いた。


CMOの取材に応じた江澤常任理事

介護保険制度の創設から20年が経ちました。これまでの歩みを振り返って、今、何を思いますか。

2000年に発足して以降、国民の支持を得ながら、順調に社会に定着してきたと思っています。多少の課題があったとはいえ、3年ごとの報酬改定や介護保険事業計画、あるいは介護保険事業支援計画の見直しによって、うまくメンテナンスを行ってきた印象です。当初はなかった予防の概念や地域支援事業なども、上手に活用しようという流れになってきています。

ただ、今や介護給付費は、トータルで11兆円を超える規模にまで膨らんでいます。これから先の20年間は全く別の次元になるので、これまでの延長線上では立ち行かなくなるでしょう。抜本的な見直しも含めた、新たな絵を描かざるを得ない状況にきていると思います。

介護保険定着に最も貢献した職種の一つ

ケアマネも“生誕20年”を迎えました。ケアマネが日本社会に与えた功績は何だとお考えですか。

介護保険の定着、介護の社会化の視点で考えると、最も貢献した職種の一つだと思います。介護保険と共に、日本の社会に定着してきた印象です。サービスの質の向上、あるいは介護保険の理念でもある「尊厳の保持」と「自立支援」を実現させる上で、最も重要なキーマンといっても過言ではないでしょう。

創設当時の厚労省の文書などを見て、最初に私が思ったのは、「こんなスーパーマンがいるのか」と(笑)。非常に幅広いフィールドの知識や技術を持ち、かつプロフェッショナルな取り組みも求められる。「こんな人は世の中にいないよね」というのが、正直な感想でした。

当初は、医師や看護職員の受験者も多かったのですが、時代の変遷の中で、福祉職からケアマネにシフトする流れができてきて、現在のような形になりました。「もう少し医療について理解してほしい」とか、「もっと医療ニーズをくみ取ってほしい」という話がよく出ますが、私は、医療職の出身ではないケアマネに対して、医療の専門的知識を求めることは、合理的ではないと考えています。

必要なのは、プランニングするための基本的な知識や、医療ニーズに応えようとする姿勢です。かかりつけ医の立場から言うと、主治医意見書ケアプランにどのように反映されているかを検証することも必要だと思います。

ここ数年、介護職員処遇改善加算などの影響で、一部のケアマネが介護福祉士に戻るという現象が起こっています。一昨年、ケアマネ試験の受験資格を厳格化したにも関わらず、その年の合格率は過去最低でした。少ない県では、新たなケアマネが数十人しか誕生していないというところもあった。ケアマネの中心的な担い手が40~50代であることを考えると、ケアマネの養成は中長期的な課題の一つです。

来年4月以降、居宅介護支援事業所の管理者は主任ケアマネが原則となります。6年の経過措置が設けられましたが、主任ケアマネ研修の受講者数も減少傾向にある。全体の数が減る中で質を高めるのは至難の業で、これからの大きな課題ですが、現行の仕組みを考えると、評価の一つの物差しになるのが、居宅介護支援事業所の特定事業所加算だと思います。

特定事業所加算を算定している事業所は、医療ニーズを含めた困難な事例に対応し、他の居宅介護支援事業所にアドバイスをする役割も担いますが、居宅介護支援事業所間の連携については、もう少し工夫の余地があると思っています。

厚労省の審議会でも申し上げましたが、特定事業所加算を算定している事業所は、地域でオープンになっていないので、どこが算定しているのかが見えない。他の事業所は相談を持ち掛けていいわけですから、もう少し有効活用して、特に困難事例においては、1人のケアマネや1つの事業所という単位ではなく、地域全体で支えるという視点が必要ではないでしょうか。

―特定事業所加算を算定している事業所を“見える化”して、地域の居宅介護支援事業所の連携のハブにするということですね。

そうです。現在、そういった取り組みをしている地域は少ないと思います。特定事業所加算を算定している事業所は、一定のハードルをクリアしているので、主任ケアマネも複数います。今の仕組みで考えると、こうした事業所を地域の社会資源として有効活用すべきではないでしょうか。

■次の20年は総力戦、「1人で重荷に感じないで」

―「これから先の20年間は全く別の次元になる」とおっしゃいました。今後、ケアマネはどのような役割を担うべきだとお考えですか。

2028年には、日本人の平均年齢が50歳に到達し、2034年には、65歳以上の人口が、40~64歳を上回る時代が訪れます。支え手と支えられる側の人口が逆転するのです。さらに2039年には、年間の死亡者が166万人となり、死亡者数のピークを迎える見通しです。

これからの20年はケアマネだけでなく、総力を挙げて、全職種で高齢者を支えてかなければならない時代になるのです。こうした中、今以上に強化する必要があるのが介護予防です。

国の政策は、重度化防止に偏っていますが、要介護者を増やさない取り組みも併せて進めなければなりません。これは当然、われわれかかりつけ医の果たす役割が大きいと思いますが、市町村によっては、専門家の数が不足しているので、看護職やリハビリ職、栄養士介護職を含めた多職種による取り組みを広げていく必要がある。その中にケアマネも参加し、ケアプランに生かしていただくことが大切です。

これからは、最期まで尊厳を保障する「大往生の時代」にしていかなければなりません。人生の最終段階まで、その方の意思を尊重するためにも、ケアマネを含めた多職種による意思決定支援が、ますます重要になってくるでしょう。

国のガイドラインでは、医療ケアチームと本人、本人が意思表示できない場合は「意思推定者」と話し合い、そのプロセスを繰り返すことで、意思決定を支援するとしています。これはもちろん、ドクターとナースだけの話ではありません。まさに人生観に関わることなので、ケアマネとも情報を共有しておかないと、その方の意思を尊重したプランニングができなくなります。

介護保険の目的は、「尊厳の保持」と「自立支援」です。究極的には、この目的に沿ったケアプランを作る必要がありますが、それは容易ではありません。私は、ケアマネが1人で重荷に感じる必要はないと思っています。地域には、さまざまな社会資源があり、多くの仲間がいます。「自分だけでいいプランを作る」と気負うのではなく、多職種連携の中で、悩みや問題を共有すべきだと考えています。

■「もう少し医師とフランクに関わっていただきたい」

ケアマネとかかりつけ医との連携については、どのようなことを期待されますか。

前回の報酬改定に伴い、ヘルパーは、利用者の口腔の状況やADLの低下、薬の飲み残しなどを発見した場合、ケアマネにそれを知らせ、ケアマネ側は、必要に応じてかかりつけ医に報告することが、運営基準上の義務となりました。

私はかかりつけ医の先生方に、「利用者の自宅の状況について、ケアマネに聞いたらどうですか?」と、よく言っています。こうしたやり取りを通して、医師とケアマネとの距離をもっと詰める必要があると感じているからです。昔のように「医師は敷居が高い」という考え方は、徐々に減ってきていますが、ケアマネ側には、もう少し医師とフランクに関わっていただきたいと思っていますし、そうなるべき時代かなと感じています。

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