ケアプラン有料化の是非や予防ケアプランの居宅介護支援事業所への移行、そしてケアマネジャーの処遇改善の行方…。ケアマネをめぐる制度は、今後も大きく変化し続けることが予想される。日本介護支援専門員協会の柴口里則会長へのインタビューでは、直近の制度改正の議論で取り上げられた主な議題についても聞いた。
―予防ケアプランを居宅介護支援に戻そうという声が上がり始めています。この点についてお考えをお聞かせ下さい。
ケアマネジメントは予防でも何でもケアマネジャーがやるべきです。その持論は変わりません。利用者にとっても、居宅介護支援事業所のケアマネが予防と介護のプランを一貫して担当してくれる方がメリットも大きいでしょう。ただ、過去の経緯を思うと、少々、物申したくもなります。
―と、おっしゃいますと?
居宅介護支援のケアマネジメントの課題を指摘し、予防ケアプランを地域包括支援センターに移したのが2006年の改革でした。その経緯があるのに、ここにきて、地域包括支援センターが大変だからと言って、元のスタイルに戻そうというのは、少し話が違わないかということです。
言うまでもないことですけど、在宅のケアマネだって忙しいのです。大変なのですよ。
予防ケアプランを、地域包括支援センターから居宅介護支援に戻すというなら、まずは、エビデンスベースの議論が不可欠でしょう。地域包括支援センターの予防プランには、どのような成果と課題があったのかを、きちんとデータとして示した上で、その問題が居宅介護支援に移すことで解決できるのかを考えなければなりません。
ただし、例え「居宅介護支援に予防ケアプランを戻すことが最善である」ということがデータで証明されたとしても、それだけでは、まだ足りないと思います。安すぎる単価を引き上げることが不可欠です。そうでなくても、居宅介護支援は全サービスの中で、唯一、収支差率が「赤字」なのですから、これ以上、安い単価の業務を引き受ける余裕はありません。
―安すぎるといえば、一般的なケアマネの年収も決して高くはありません。
全産業の平均年収は約440万円ですが、それだけの収入を得ているケアマネがどのくらいいるでしょうか。私としては、少なくとも、すべてのケアマネが、そのくらいの収入を得ないといけないと思う。最終的にはケアマネの平均年収は500万円くらいにしなければならないでしょう。そうでないと、とても人は集まりません。
そのためには、まずは単価を上げる必要があります。基本報酬を上げるということです。その上で、1人あたりのケアマネが担当できる人数を増やすことを検討してもよいと思います。もちろん、担当できる数を増やす前提としては、ICTやAIを居宅介護支援の現場にさらに普及させる工夫も必要でしょうね。
ちなみに、AIというとそれだけでも拒絶反応を示すケアマネもいますが、AIはあくまでツールです。ケアマネに取って代わるものではありません。当たり前のことですけど、念のため強調しておきます。
―処遇改善とともに常に議論になるのが有料化の導入です。
このテーマについては、社会保障審議会介護保険部会の議論で浮かんでは消えてきた歴史があります。今後、その導入をさらに真剣に検討するというなら、ワーキンググループを作り、エビデンスと緻密な議論に基づき、是非を考えるべきではないでしょうか。
その上で、有料化を導入するというなら、丁寧に国民に説明しなければならない。そうした議論も説明もなく、いきなり有料化を導入したところで、ケアマネも国民も納得しません。
―ウィズ・コロナ時代、ケアマネはどのような姿勢でケアマネジメントに臨むべきでしょうか。
まずは、これまでと同様、利用者の代弁者であり、自立を支えるプロとしての意識を持ち続けることです。そしてプロとして、自己研鑽し続けなければなりません。
現場のケアマネの皆様は、日々の業務や法定研修も平常時とは異なる対応を求められ、負担感は大きいと思います。また、自身の心身の安全確保はもとより、自らが感染源とならないようにするための気苦労も絶えないことでしょう。そのご尽力には敬意と感謝を申し上げます。我々は不確かな情報に一喜一憂せず、必要以上に恐れる事もせず、「感染しない・感染させない」を徹底し、専門職としての誇りをもって、引続き手順通りに業務を進めていきましょう。