AIとケアマネのあるべき関係性とは?―ベテランの発言から読み解く

NTTデータ経営研究所(東京都)は今年4月、ケアマネジャーへのグループインタビューの分析(※編注)などを通して、AI(人工知能)によるケアマネジメント業務の支援の可能性を考察した報告書を公表した。この中には、経験豊富なケアマネ15人の発言内容が詳細につづられており、いわゆる“AIケアプラン”に対するベテランの考えを知ることもできる。調査・研究で見えてきたAIとケアマネのあるべき関係性とは―。

※編注 音声データを文字に起こした後、発言者の意図を端的に要約し、それを3つのカテゴリーに分けることで、インタビュー内容を整理する手法が用いられた。

この調査・研究は、厚生労働省の2018年度の老人保健健康増進等事業(老人保健事業推進費補助金)の一つ。

「検討会委員」という言葉がいきなり出てくるので、「調査・研究に当たり、同研究所では、学識経験者らによる検討委員会を設置。事業の柱となったグループインタビューでは、▽居宅介護支援事業所に所属▽担当利用者がいる▽主任ケアマネの取得▽スーパービジョン研修の受講▽スーパーバイザーの実務経験▽AIを開発する企業の実証研究に参加していない―の6つの条件の下、日本ケアマネジメント学会と日本介護支援専門員協会の委員の協力で対象者を選出した」としました。

選ばれた15人(男性5人、女性10人)のケアマネは、関東近郊の居宅介護支援事業所に所属している。このうち半数近くは40代で、ケアマネとしての実務経験は15年以上(8人)が最も多かった。基礎資格は、介護福祉士(9人)や社会福祉士(6人)など(複数回答)。

グループインタビューは昨年12月~今年1月、5人を一つのグループとして、3回(各2時間)に分けて行われた。AIに関する基礎知識の偏りをなくすため、同研究所では、AIの基本が学べる書籍を事前に配布し、読後にインタビューを受けてもらった。

発言内容を分析する際は、インタビューの音声データを文字に起こした上で、発言の意図が端的にわかるように要約。それをサブカテゴリ―(機能)、カテゴリー(必要な要素)に分けた上で、5つの中核カテゴリー(一般化)にまとめた。

例えば、「AIを使うことによって、週3回リハビリをやったら、6カ月後にはこれぐらいの技能が上がるんじゃないかという見える化をしてくれるというのは、いいかなと思う」という発言(要約)は、サブカテゴリ―(支援を望む機能)が「将来の経過予測の提示」、カテゴリーが「ケアプランの根拠・達成度等の見える化(支援)」となり、最終的に「データ分析」の中核カテゴリーに入るといった具合だ。

■知識・情報の補完や事業者選択のサポートを

ケアプラン原案(第2、3表)の作成に関しては、「利用者に合ったサービス事業者選択サポート」の機能を求める声が強かった半面、「ケアプランへの『その人らしさ』の反映」と「サービス事業者との顔が見える関係性構築」などについては、AIの支援を望まないケアマネが多かった=表=。



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AIによる支援を望まない機能では、トップが「五感(視覚・嗅覚等)を使った状況把握」で、以下は「家族関係や生活歴を含めた利用者の背景理解」「サービス事業者との顔が見える関係性構築」などと続いた。

ケアマネジメントプロセス以外の業務では、教育研修での支援を期待する声が最も多く、「AIが作成したケアプランを活用し、なぜこのアセスメント結果からこのサービスが出力されたかを考えるケーススタディは現時点でも導入可能である」や「AIを模擬利用者に見立てたインテークアセスメントのロールプレイができると良い」「ケアマネジャーの経験年数に応じてサポートできると良い」といった意見が寄せられた。

調査・研究を担当した同研究所ヘルスケアグループ、シニアコンサルタントの西口周さんは、「インタビューでは、AIの膨大なデータから、自分にはない視点での課題分析サポートや苦手分野の知識、地域資源の情報の補完を望む声が多く上がりました。制度が目まぐるしく変わる中、ケアマネジャーはたくさんの利用者を抱えているので、新しい知識を学んだり、地域資源の情報を収集してケアプランに反映する時間が十分に取れない。そこをサポートしてほしいと考えているのでしょう。背景には、利用者との合意形成の際、あやふやな知識のままでは、限られた時間で納得のいくケアプランを提示できず、利用者の意欲を十分に引き出せないという課題意識があるのだと思います」と指摘する。

■「ケアマネとAIは互いに成長し合う関係を」

報告書では、「まずは、ケアマネジャーがAIについて理解することから始め、両者が相互的に補完する視点が重要である」とした上で、「AIに支援可能なことと困難なことを理解し、AIが分析・提示した結果を鵜呑みにしたり否定したりするのではなく、ケアマネジャーが主体となり、AIが提示した結果を元に新しいケアマネジメントの視点に気づき、AIが提示した結果を評価して、教師データとしてAIにフィードバックすることでAIを成長させる必要がある」と総括している。


CMOの取材に応じた米澤さん=左=と西口さん

ヘルスケアグループ長の米澤麻子さんは、「『いいケアマネジメントとは何か?』という定義をデータで示すことは、まだできていません。現時点ではデータとして扱いやすい要介護度やADLなどがアウトカムとして活用されています。一方、アウトカムとしてのQOLの測定にはまだ限界もあるでしょう。AIを育てるために必要なデータをどう整備するのかというのが、今後の大きな課題になると思います」と指摘する。

AIの活用をめぐっては、「ケアマネの仕事が奪われる」との懸念の声がある一方、「ケアマネジメント業務は対人援助スキルが必要なので、AIには不可能だ」との指摘も出ている。西口さんは、「AIが提供する知識や情報は、あくまで判断材料の一つです。それをケアマネジャー咀嚼して、納得するまで考えることによって、ケアマネジメントの質が向上する。そして、ケアマネジャーが納得するまで考え抜いた答えを“教師データ”としてフィードバックを受けたAIが成長するという、情報をキャッチボールする視点で考える必要があります」と話した。


調査・研究報告書より抜粋
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◎調査・研究報告書の全文はこちら

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