訪問介護の生活援助サービスに利用回数の基準が設けられたことに伴い、一部の自治体で事実上の“利用制限”が行われている可能性があることが、ケアマネジメント・オンラインの調査で明らかになった。厚生労働省側はこれまで、「あくまで、より良いケアプランにするために内容の是正、再検討を促すもので、利用回数を超えたことによって一律に利用制限を行うものではない」と強調してきたが、この結果をどう受け止めるのか―。同省の担当者を直撃した。
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ケアマネジメント・オンラインの取材に応じたのは、厚労省の川部勝一課長補佐。川部補佐は、老健局振興課でケアマネの業務を担当している。
今回の調査結果では、利用回数の基準が設けられたことで、ケアプラン作成の際に基準に配慮しているケアマネが全体の6割近くに達した。このうち17.0%は、「常に基準を超えないようにしている」と回答している。一方、自治体から何らかの働き掛けが「あった」と回答したケアマネは15%に上り、一部のケアマネと保険者の間で、基準が事実上の“上限”となっている実態が明らかになった。
CMOの取材に応じた川部補佐
この点について川部補佐は、「あくまで自立支援と重度化防止が目的であって、決してサービスの利用を制限するためのものではない」と繰り返し強調。制度の趣旨を正しく理解してもらうため、今後、都道府県の担当者を集めた会議などで改めて周知する考えを示した。
■「手間が理由なら非常に残念」
一方、基準を超えそうな場合、利用者に回数を減らすよう依頼したことがあるケアマネがおよそ1割に上ったことについては、「万が一、手間だからという理由で利用回数を減らしているのであれば、ケアマネの業務を担当する立場としては非常に残念です」と率直な思いを語った。
今回の調査では、基準の設定が自立支援に役立つと考えるケアマネは2割に満たなかった。いわば制度の趣旨を否定された形だが、川部補佐は「基準そのものが自立支援に役立つかと言えば、アンケートの結果の通りだと思います」と前置きした上で、「地域ケア会議の中で、多職種が問題点をあぶり出す。そのことで、ケアマネは気付きを得ることができ、それが自立支援につながると考えています。多職種の視点が入ることが重要なのです」と指摘した。
「ご自身が立てたケアプランに自信と誇りを持っていただきたい」―。川部補佐は取材の最後に、現場のケアマネにこうエールを送った。
「専門的な見地から、その利用回数が必要だと判断されたはず。基準があるからという理由で変えてしまっては、ご自身の専門性を否定していることになります。ご自身のケアプランを信じていただきたいと思います」