総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済は、医療用薬剤全24分類の国内市場を今年1月から2年かけて6回にわたり調査を行なっている。 第3回の今回は、呼吸器疾患治療剤、感覚器官用剤、抗アレルギー剤、皮膚疾患治療剤そして解毒剤市場の調査結果を、報告書「2010 医療用医薬品データブックNo.3」にまとめた。
この調査では、疾病概要、患者数、エビデンス(調査研究に基づく、医薬品・治療・検査方法などの適正判断用証拠)・診療ガイドラインの動向、治療薬剤、企業の製品開発などを調査・分析した。また行政の動向やジェネリック医薬品の浸透度、スイッチOTCの現状など、この市場に影響を及ぼす要因を分析した。
今回発表されたリリースから、高齢者に多いCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と、老若男女問わず患者数が増えているアレルギー剤について、結果の一部を紹介する。
【COPD治療剤(慢性閉塞性肺疾患 呼吸器疾患治療剤) 】
2008年 2009年 08年比 2010年見込 09年比
314億円 332億円 5.7%増 370億円 11.4%増
慢性閉塞性肺疾患は09年に診断・治療のガイドラインにタバコと明記された煙を長期に吸入曝露して発症する肺の炎症性疾患である。患者数は非常に多いと推定されるが治療を受けている人はその1割にも満たないという現状である。喫煙や、受動喫煙がCOPDリスクを高めるとして、厚労省の検討会は今秋には提言をまとめる予定である。
長期喫煙者はたとえ禁煙しても5〜60歳代に罹患する確率が高く、今後2〜30年は患者の増加が予測される。治療剤は、気管支拡張剤として抗コリン剤、β2刺激剤、テオフィリン製剤が投与され、抗炎症薬として吸入ステロイド剤が使われる。抗コリン剤の日本ベーリンガーインゲルハイム「スピリ−バ」、吸入ステロイド剤/β2刺激剤の配合剤のグラクソ・スミスクライン「アドエア」があり、今後も実績が拡大すると予測される。
【抗アレルギー剤】
2008年 2009年 08年比 2010年見込 09年比
1,636億円 1,631億円 0.3%減 1,414億円 13.3%減
この市場はアレルギー性鼻炎、中でも花粉症をターゲットとしており、今後もこの患者の動向が市場を左右すると予測する。09年に改定された「鼻アレルギー診療ガイドライン」でも新有効成分が追加されるわけではなく、既存のトロンボキサンA2拮抗剤やTh2サイトカイン阻害剤が追加されるに留まり、市場にインパクトを与えるに至らなかった。今後もガイドラインに新有効成分が追加されなければ、抗アレルギー剤=ヒスタミンという構図は変わらないと考えられる。こうした状況から、OTC医薬品との競合も、またジェネリック医薬品とも競合すると考えられる。