東北大学大学院薬学研究科の福永浩司教授らの研究グループは、1月26日、実験モデルを用いた研究で、アルツハイマー病の治療候補薬が記憶と認知機能を改善したと発表した。
福永教授らは、1982年にシナプス伝達効率を高める記憶分子「CaMKII」を発見。CaMKIIをターゲットにした認知機能改善薬の開発研究を行ってきた。今回、そのうちのT型カルシウムチャネル活性化薬 「SAK3」がアセチルコリン神経終末のカルシウム濃度を高めることにより、記憶を維持するのに重要な神経伝達物質アセチルコリンの遊離を高めること、その結果、CaMKIIを活性化することを証明した。さらに、アルツハイマー病モデルマウスで、記憶と認知機能が改善することを証明した。
「SAK3」は、既存の薬と認知症を改善する機序が異なるため、既存薬で治療が困難だったアルツハイマー型認知症の患者への有効性が期待されるほか、軽度認知症から使用できる可能性があるという。また、SAK3はアルツハイマー病の原因であるアミロイドβタンパク質の蓄積を抑制することもマウスで確認でき、 認知症の原因をとりのぞく新しい治療薬としても期待される。現在、SAK3は、前臨床試験の毒性・安全性試験を終了しており、今後は臨床試験の実施を計画している。
◎東北大学 プレスリリース
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2017/01/press20170126-01.html