■機械浴はあえて導入せず
大和ハウスのグループ会社が運営するサービス付き高齢者向け住宅「D-Festa(ディーフェスタ)」が、このほど西船橋に完成した(受託運営:東京海上日動ベターライフサービス株式会社)。
(D-Festa西船橋の外観)
D-Festaは関東を中心に10数施設を展開しているが、今回完成した西船橋の施設では、他の施設にあるような機械浴を設置していないという。その代わりに導入されたのが、2015年2月に発売された、パナソニックエイジフリーライフテックの自立支援型ユニットバス「セルフィーユ」だ。
セルフィーユは人間工学に基づいて設計されており、自宅と同じように入浴を楽しむことができる。自立支援を志向する施設として、あえてこのような設備設計にしたようだ。
■高齢者の個浴を可能にする「セルフィーユ」
セルフィーユは、介護総合研究所「元気の素」代表の上野文規氏監修のもと、生活リハビリの視点から開発された。上野氏によれば、「人の自然な動きを日常生活で継続することが効果的なリハビリにつながる」ため、セルフィーユは人の自然な動きを妨げないような設計となっている。
たとえば、浴槽のふちはどこでもつかむことができ、手すりとして機能する。肩より低い位置にあるため、手のひらでしっかりつかむことができ、力が入りやすい。
浴槽を浴室の壁から15cm離したことも工夫の1つ。通常、人が浴槽を出入りしようとする時、自然と前屈姿勢になるが、浴槽が壁にぴったり接していると、前屈により頭が前に出るのを壁が妨げてしまう。しかし壁との間に15cmのすき間をつくることで、頭を出せるだけの空間を確保している。
浴槽の深さを50cmと深めにし、内側の壁面をほぼ垂直にしたのも大きな特徴だ。最近は角度がなだらかな浴槽が一般的だが、滑りやすく、高齢者は溺れる危険がある。これを垂直にすると、中で座ったときに骨盤が起き、座位が安定しやすくなるのだという。
立ち上がるときには、深さのおかげで大きな浮力が発生し、介助者が力任せに引き上げる必要もない。そのため、介護スタッフの負担も軽減できるというメリットがある。
(浴室の様子)
■あわせて使うと便利な「アクアムーブ」
セルフィーユとあわせて使うと便利なのが、可動式入浴台の「アクアムーブ」。浴槽に横付けすれば、入浴台として使用できる。肘掛けを下げれば1.5人分の座面が確保でき、介助者が隣に座って介助ができる構造になっている。
■生活リハビリと介助の負担軽減は両立可能
日本人にとって“お風呂”は欠かせない習慣であり、文化でもある。ただ、介護スタッフにとっては介助負担も大きく、腰痛の原因にもなりうる。そのため機械浴で負担を軽減しようとする施設は少なくない。
ところがセルフィーユやアクアムーブは、本人の自然な動きを可能にするという観点から開発されたツール。余計な力を使わず、体重移動をしやすくしたものであるため、本人の生活リハビリと介護スタッフの負担軽減を、同時に実現することができる。
あくまで個浴を重視し、機械浴の代わりにこのセルフィーユを導入したD-Festa西船橋。この方針は、充実した生活を求める高齢者に受け入れられそうだ。
D-Festa西船橋は、総戸数50戸で、10月のオープン予定。東京海上日動ベターライフサービスが運営する訪問介護事業所と居宅支援介護事業所「みずたま介護ステーション」を併設している。