
先日、老人保健施設の施設長であり医師でもある方に、「生きるためのリスク」についてお話をお聞きしました。
リスクには「やることで生じるリスク」と「やらないことで生じるリスク」の2つがあるとのこと。
例えば、高齢者が転倒して大腿骨頸部骨折を起こしたとき、手術後の選択肢は2つ。
1つは、再び歩けるよう治療やリハビリに取り組むこと。もう1つは、再び転倒しないように、立たない、歩かないという選択です。
前者を選べば、高齢者の場合は回復しても再び転倒する可能性があり、もし転倒すればまた骨折することもあり得るでしょう。これが「やることで生じるリスク」。一方、後者を選ぶと、骨折の危険は抑えられますが、動かないことにより筋肉が衰えたり、骨がもろくなったり、関節の動きが悪くなったりし、寝たきりになる可能性が。これが「やらないことによるリスク」です。
高齢者ががんになった場合も同様です。
高齢になるほど手術は体の負担になりますし、化学療法に伴う副作用のつらさに耐えられるかどうかの問題も。また治療を続けることでQOLも低下するでしょう。高齢者の場合は、がんの進行はゆるやかですから、治療をしてもしなくても寿命は同じかもしれません。むしろ、手術・治療をしないほうが、今までのQOLを維持でき、充実した余生を送ることができるとも考えられますよね。
どちらのリスクを選べばいいのかという局面に立ったときは、「生きる」とはどういうことなのかを改めて考えてみる必要がありそうです。




