犬を治療やリハビリに介在させる「ドッグセラピー」は、認知症患者の生活意欲を高め、リハビリテーション効果を向上させるとの研究結果を、岡山市の社会福祉法人義風会が発表した。
同法人では、2002年より脳血管障害後遺症としての運動障害や失語症を持つ人、認知症状を持つ人などにドッグセラピーを実施している。今回の研究は、それらの経験を踏まえて「認知症ケアモデル」の構築を目指したもの。
研究では、市内の介護施設に入居する認知症の高齢者を「言語による意思疎通ができるグループ」と「言語による意思疎通ができないグループ」に10人ずつ分け、車椅子からベッドへの移動と歩行のリハビリを4カ月実施。
「言語による意思疎通ができず、犬に関心を示す」グループにはドッグセラピーを実施した。
その結果、車椅子からベッドへの移動と歩行の点数は2つのグループとも改善したが、ドッグセラピーを行ったグル―プでは、ベッドへの移動と歩行以外の食事や着替えなどの日常動作でも改善がみられた。
また、意欲の向上を表す指標については、ドッグセラピーグループにのみ改善がみられ、約3倍となった。
研究結果から、ドッグセラピーを行ったグループは、意思疎通のできない認知症高齢者であるにも関わらず、犬に対する好意的な感情から活動意欲が向上し、日常動作全体の改善に影響があったと考えられ、「認知症高齢者にとって意欲向上には、言葉ではなく感情・情動が重要ではないか」とまとめている。
◎社会福祉法人義風会
http://www.okayama-ikiiki-shiawase.net/
◎ドッグセラピーによる認知症高齢者に対する生活意欲の向上とリハビリテーション効果の調査研究
http://www.okayama-ikiiki-shiawase.net/common/pdf/1304_dog.pdf