2024年度に予定される介護保険法改正に向けた議論が24日、社会保障審議会介護保険部会で始まった。初日は制度全体を見据えた自由討論が行われたが、いきなりケアプラン有料化をめぐり、賛成派と反対派の委員が意見を述べ合う展開に。次の法改正に向け、その是非が焦点に浮上した。
この日、厚生労働省の担当者は、今後の介護保険制度をめぐる状況について、次のように説明した。
・25年以降、介護保険制度の支え手である現役世代(15歳から64歳)が急減する
・85歳以上の人口は、15年から25 年までの 10年間 、75 歳以上人口を上回る勢いで増加。35 年ごろまで一貫して増え続ける
・19年度末段階の要支援・要介護の認定者数は約669万人。20年間で約2.6倍に増加
・40年度までに新たに約69万人の介護人材の確保が必要になる見通し
その上で、政府内では「ケアマネジメントへの利用者負担導入(ケアプラン有料化)」や「利用者の負担の拡大」「軽度者への生活援助の見直し」「福祉用具における貸与から販売への転換の促進」の是非が、介護保険制度をめぐる論点と位置付けられていることを説明。また、「科学的介護の推進」や「ロボットやAI、ICTの活用による生産性向上」などの必要性が指摘されていることも紹介し、委員らに議論を促した。
■「このままでは制度破綻」「逆にコスト増」-プラン有料化めぐる議論
議論では、井上隆委員(日本経済団体連合会常務理事)が、ケアプラン有料化の実現を強く主張。河本滋史委員(健康保険組合連合会常務理事)も同様の意見を述べた上で「これまでと同じ施策を続けられる状況ではない。(同じ施策を続ければ)いずれ、制度は破綻する」と警鐘を鳴らした。
一方、濱田和則委員(日本介護支援専門員協会副会長)は、ケアプラン有料化によって地域包括支援センターなどでの支援業務が増えたり、社会的入院が増加したりする可能性を指摘。「結果的に社会コストが大きく膨らんでしまう」とし、反対する姿勢を明示した。花俣ふみ代委員(認知症の人と家族の会常任理事)も、サービスの利用控えを招きかねないとして、その実現に反対した。
■公費投入の拡大や保険者の広域化を求める声も
この日の議論では、思い切った制度改革を求める意見も相次いだ。
大西秀人委員(全国市長会介護保険対策特別委員会委員長・香川県高松市長)は市区町村が介護保険の保険者となっている点について「広域化も含め、議論すべき」と主張。さらに、介護人材不足が特に深刻な地域には、特別な施策を講じられる仕組みの導入が必要と訴えた。
また、江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、より多くの公費を介護保険に投入することで、制度の持続可能性を高めるべきと指摘。桝田和平委員(全国老人福祉施設協議会介護保険事業等経営委員会委員長)は、「65歳を過ぎても元気な人が多い」とし、65歳以上の要支援・要介護認定者を第1号被保険者とする現状の仕組みの見直しを提案した。