2024年度にはケアプランを有料化すべき―。財務省・財政制度等審議会が「財政健全化に向けた建議」(建議)で示した提言だ。だが、この建議には、ケアプラン有料化以外にも、ケアマネジャーの業務を大きく変えうる、見落とせない提言が含まれている。
建議では、「社 会保障制度の持続可能性を高め、現役世代が希望をもてるようにしていくことは、我が国経済にとっても待ったなしの課題」と強調。社会保障費の伸びを抑制するため、提言した施策を来月にも閣議決定する今年度の「骨太方針」に反映するよう訴えている。
介護に関しては、以下の実現を求めている。
1.24年度以降、利用者負担を原則2割とすること、あるいは2割負担の対象範囲を拡大
2.24年度以降、居宅介護支援のケアマネジメントにも利用者負担を導入
3.24年度以降、老健や介護医療院などの多床室の室料相当額を、基本サービス費から除外
4.総合事業における事業費の上限超過を厳しく抑制
5.居宅療養管理指導や訪問看護など、軽度者への医療系サービスの適正化
6.サービスの質を確保した上で、業務の ICT 化などによる業務効率化を促進
7.経営主体の統合・再編などによる、事業所や施設の運営の効率化の促進
8.介護サービス事業者の財務諸表などの報告・公表の義務化
9.区分支給限度基準額(限度額)の外に位置付けられた加算の取り扱いの見直し
10.サービス見込み量を超えた場合、市町村が都道府県への事前協議の申し入れや指定拒否ができるようにすることで、自治体が実際のニーズに合わせて地域の居宅サービスの供給量をコントロールできるようにする
このうち、2.のケアプラン有料化と1.の原則2割負担の導入がケアマネの業務に深く関わることは、言うまでもない。
それ以外で注目すべきは、9.の「区分支給限度基準額外に位置付けられた加算の取り扱いの見直し」と、5.の「居宅療養管理指導や訪問看護など、軽度者に対する医療系サービスの適正化」だろう。
■見直すべき限度額外の加算、具体名まで提示
9.では、特に「生活と密接に関連している度合が高いと考えられる、居宅における生活の継続の支援を目的とした加算」について、限度額外としている措置を見直すよう求めている。そして「生活の継続の支援を目的とした加算」としては、以下を提示した。
「総合マネジメント体制強化加算」(定期巡回・随時対応型訪問介護看護、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護)
「訪問体制強化加算」(小規模多機能型居宅介護)
「看護体制強化加算」(看護小規模多機能型居宅介護)
こうした加算の限度額上の扱いが変更になれば、ケアプラン見直しを求める利用者も増えると予想される。特に地域密着型サービスを使う利用者を抱えるケアマネにとって、この提言の行方は見逃せないだろう。
■指導やプランチェックを厳格化させる可能性をはらんだ提言も
また、「居宅療養管理指導や訪問看護など、軽度者に対する医療系サービスの適正化」の提言の文中には、次のような指摘がある。
「『必要以上に居宅療養管理指導を利用するプランを作成した』ケアマネジャーが一定数いることが確認されており…」
つまり、過剰な居宅療養管理指導の利用の背景には、ケアマネの不適切な対応があると指摘しているのだ。それだけに、この提言はケアマネへの指導やケアプランのチェックをより厳格化させる可能性をはらんでいる。
もう一つ、注目すべきは8.の「介護サービス事業者の財務諸表などの報告・公表の義務化」だろう。この提言が実現すれば、居宅介護支援事業所も損益計算書をはじめとする事業報告書など公表しなければならなくなり、その分の業務負担が増える。規模の小さな事業所にとっては、この提言の行方も気になるところだ。