厚生労働省は、ケアプラン作成や利用者への情報提供などを行ったにも関わらず、介護サービスの利用に至らなかった場合でも、ケアマネジャーが報酬を得られるよう検討する方針を示した。また、ケアマネジメント業務以外で何らかの緊急対応をした場合、実費を請求できる仕組みの導入についても検討する。いずれも10月30日の社会保障審議会介護給付費分科会で示した。
■4割余りのケアマネが「サービス利用がなかった支援」を担当
現在の制度では、利用者が介護保険サービスを使わない限り、ケアマネは基本報酬を算定できない。例えば、利用者の退院を想定し、支援を実施したものの退院できなかった場合や、介護保険サービス以外のサービスのみのケアプランを作成した場合などでは、ケアマネは基本報酬の算定ができない。
こうしたケースは決して珍しくはない。事実、昨年度に厚労省が実施した調査では、「情報提供や相談、ケアプラン作成、サービス調整などを行ったが給付管理に至らなかったケース」が1件でもあったケアマネは43.3%いた。
この状況を踏まえ厚労省は、「介護保険サービス利用を前提に必要なケアマネジメントの対応を行ったが、利用者の事情で、サービス利用につながらなかった場合」でも、介護報酬を得られるよう検討する方針を提示。同分科会でも議論を求めた。
■利用なしのケースへの評価、委員の間で賛否分かれる
厚労省の方針に対し、濱田和則委員(日本介護支援専門員協会副会長)は、「サービス利用の実績の有無にかかわらず、一定のプロセスを経たものには報酬算定が可能としていただければ、自立支援や適切なサービス利用にもつながる」と述べた。伊藤彰久委員(連合総合政策推進局生活福祉局長)らも、厚労省の方針を前向きに評価した。鎌田松代委員(認知症の人と家族の会理事)は、サービス利用に至らなかったケースでも何らかの対価が必要としながらも、対価については「介護報酬の外で対応してほしい」と述べた。
一方、齋藤訓子参考人(日本看護協会副会長)は、「他のサービスでも起こり得ること。整合性を持った対応が必要」と指摘。また小泉立志委員(全国老人福祉施設協議会理事)や江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「基本報酬で対応すべき」と述べ、サービス利用に至らなかったケースを介護報酬で評価する方針には、慎重な姿勢を示した。
■「業務外対応への実費徴収案」には反対意見が続出
また厚労省は、利用者の緊急時にケアマネジメント以外の業務に取り組んだケアマネが、実費を徴収ができるようにする方針も示し、議論を求めた。
しかし、この方針については、多くの委員が反対。濱田委員も「明らかに業務外のものであれば、厚労省の提案も考えられなくもないが、緊急時の場合、利用者の同意を得ることが難しい」と、慎重な姿勢を示した。