利用者35人に対してケアマネジャー1人の配置を求める居宅介護支援の人員基準の引き上げに反対するケアマネが37%に上り、賛成意見を上回ることが、ケアマネジメント・オンラインが行ったアンケート調査でわかった。ただ、「どちらとも言えない」(35%)と拮抗しており、態度を決めかねているケアマネが多数いる状況もうかがえる。
居宅介護支援の人員基準の引き上げをめぐっては、日本介護支援専門員協会も実施を要望しており、来年春の介護報酬改定の焦点の一つとなっている。
調査は14~23日にインターネット上で行われ、ケアマネ会員155人から回答を得た。人員基準の見直しへの賛否を尋ねたところ、「反対」が37%(58人)で最も多く、次いで「どちらとも言えない」(35%、54人)、「賛成」(28%、43人)と続いた。
■06年度前より「業務量は増えた」
アンケートの自由記載では、それぞれ選択肢を選んだ理由をコメントしてもらった。
反対派からは、「マネジメントの質を維持できなくなります」(岐阜、40代男性)、「35件が限度、30件でもいいと思う。現状より受け持ち人数が多くなると、質が落ちると思う」(埼玉、50代男性)など、ケアマネジメントの質の低下を懸念する声が多数上がった。
また、「書類や訪問回数の制限が緩和されない限り無理」(千葉、40代女性)、「担当人数を増やすと事業所としての収益は上がりますが、ケアマネの負担は大きくなり、残業が多くなると思います」(福岡、60代女性)などのコメントもあった。
居宅介護支援の人員基準は、2006年度の地域包括支援センターの創設に伴い、利用者50人から35人に引き下げられた経緯があるが、回答者からは、当時より業務負担が増しているとする意見も多かった。
滋賀県の50代の男性は、「50人上限だった頃とは、ケアマネの業務量も段違いに増えている。現状の質を担保するなら見直すべきではない」と回答。また愛知県の40代の女性も、「その当時より書類も増えています。現在の勤務状況では無理!」とコメントした。
■引き上げ賛成も、業務効率化が優先
一方の賛成派からは、ケアマネジメント業務の効率化を図った上で、基準を引き上げるべきとする意見が多かった。
埼玉県の40代の男性は、「ICT活用や捺印のあり方、働き方改革等を同時並行で進めないと、激務で過労死するケアマネが出そうで心配です」と回答。また千葉県の40代の女性は、「ケアマネのなり手が減って利用者が増えているので仕方ないと思うが、書類などの簡略化でケアマネの魅力をあげることも必要です」とコメントした。
さらに、事業所の収益増の観点から引き上げの必要性を指摘する意見もあった。鹿児島県の40代の男性は、「事業所の売り上げが上がらないことには、自分らの処遇の改善等到底求められない」と主張。このほか、「本体報酬も当然アップして利益率の向上をすべきだ」(長野、60代男性)、「35件では儲からない。生活できない」(栃木、30代男性)などの指摘もあった。
群馬県の30代の男性は、「枠を広げておくことは賛成だが、事業所加算を算定している事業所のみが良いと思う」とコメントし、一律に基準を引き上げることに慎重な姿勢を示した。
■「人員基準ではなく報酬の問題」
反対意見と拮抗した「どちらとも言えない」の回答者からは、「人員基準が問題ではなく、報酬の問題だと思う」(奈良、40代男性)、「このことによって基本単価が引き上げられないのであれば反対」(兵庫、40代男性)、「担当者数の見直しだけではなんとも言えない。報酬次第になる」(静岡、50代男性)など、基本報酬の引き上げと併せて見直すよう求める意見が出た。
一方、神奈川県の50代の女性は、「居宅の収支面では良い話かもしれないが、ケアマネ個人の負担を考えるとしんどい」とコメントし、事業所の収益とケアマネジメント業務との間で揺れ動く心情がうかがえた。
このほか、「現業人員の過不足や現実的な動線など地域格差があるので、本当になんとも言えないです」(島根、40代男性)や「ケアマネ本人の資質次第ではないでしょうか。『質』が落ちないことが前提ではないか」(長野、30代男性)などの声も上がった。