認知症の人と家族の会は、新型コロナウイルスの感染拡大防止に取り組むデイサービス事業所などを対象とした「特例報酬」の撤回を求めた意見書を加藤勝信厚生労働大臣に宛てて提出した。
厚労省は、一定の回数に限り、実際のサービス提供の時間区分より2区分上の報酬を算定できる「特例報酬」を6月に導入した。地域密着型や認知症対応型も含めたすべてのデイサービスと、通所リハビリやショートステイ、短期入所療養介護が対象となっている。
この「特例報酬」について、同会の電話相談や支部には「利用者・家族は事業所の大変さを理解し、利用時間を減らして協力している上に、さらに利用料の負担増まで強いられるのはおかしい」「このような理不尽なことがまかり通れば、利用者・家族の生活は立ち行かなくなってしまう」などの意見が寄せられているという。
こうした状況を踏まえ、同会では意見書を厚労省に提出した。意見書では、「(会では)デイサービスやショートステイなどが感染症による減収で閉鎖に追い込まれるような、『介護崩壊』が起こらないことを誰よりも願っている」とした上で、「(感染症拡大という)不可抗力による事態を、利用者に負担を押し付けて解消しようとするような今回の措置は、利用者と事業者の信頼関係を壊すだけでなく、介護保険制度への国民の信頼を揺るがし、国の責任を放棄するものと言わざるをえません」と指摘。「特例報酬」を撤回するよう強く要望している。また、介護事業所の減収や感染対策のための経費などについては「補正予算の予備費を使い、公費で補填する」ことを求めた。
■「ケアマネも事業所も困っている」-鎌田理事
意見書は、その内容を解説した動画とともに、同会のホームページ上に掲載されている。動画では「家族の会」の鎌田松代理事が、「特例報酬」が導入されたにも関わらず、区分支給限度基準額(基準額)は変更されていない点も問題として指摘。その結果、「特例報酬」の算定に伴う追加の負担にも不公平が生じているとした上で、「ケアマネも困っている。事業所さんも、どう説明したらいいかわからず困っている。みんなが困っている」と述べた。