厚生労働省の事務方トップの鈴木俊彦事務次官はこのほど、東京都内で講演し、政府の「全世代型社会保障検討会議」が今年夏に行う最終報告に向け、同省が医療と介護の将来像を示す方針を明らかにした。
冒頭、あいさつに立つ鈴木事務次官
一般社団法人「医療介護福祉政策研究フォーラム」が主催した「2020年新春座談会」で登壇した鈴木事務次官は、「国民の皆さんに安心していただける医療を保障しようとすると、具体的にあるべき医療の絵姿、提供体制であったり、医療のかかり方であったり、これを明らかにした上で、その絵姿を実現する。それを費用面で支えるために、医療保険の給付と負担のあり方を論じるという手順、考え方が必要だし、それは介護も同じだ」と述べた。
また、「日本の社会福祉、社会保障の制度は高度に専門分化し、それぞれが非常に充実していくことによって発展してきたが、はたと気が付くと、制度中心、事業中心に地域や人々を見ると解決できない問題が生じてきた」と指摘。その上で、「『8050解決法』や『ごみ屋敷解決法』を作ればいいかと言えば、そんなことはない。ツールは既にある」とし、既存の地域資源をうまく組み合わせる重要性を強調した。
■2040年は「85歳がカギ」―田中滋氏が強調
「2020年新春座談会」では、地域包括ケア学会理事長で、この分野の研究の第一人者でもある埼玉県立大の田中滋理事長も講演した。
田中理事長は冒頭、「これからの日本社会の街づくりや生活を考える上で、85歳がカギになる」と強調。前回の東京オリンピックが開かれた1964年から、日本の85歳以上の人口は25倍に増えていると指摘し、要介護認定を受けていない高齢者の生活支援を課題として挙げた。
さらに、「85歳以上が増えてくると、今、介護保険の給付管理をしているケアマネジメントだけでは足りなくなる」と主張し、「給付管理をするケアマネジャーは残るだろうが、それだけではケアマネジャーではない。ケアマネジメントの本質は、その人の生活全体をマネジメントすることだ」と述べた。
「85歳がカギになる」と語った田中理事長