11月19日に開催された第36回社会保障審議会介護保険部会では、事務局が作成した素案に対して、各委員から修正や削除を求める声が相次いだが、ケアマネジメントの根幹を揺るがしかねない「居宅介護支援費の利用者負担導入」に対して、日本介護支援専門員協会会長の木村隆次委員は、導入反対の理由を以下のように述べた。
たとえばケアプラン作成料を毎月1,000円とすると、これはデイサービス1回分、訪問介護の生活援助(30分以上1時間未満)約5回分、訪問介護の身体介護(30分以上1時間未満)約3回分に相当し、結果として必要なサービスを削らざるを得ないことも考えられ、重度化へのスピードが加速することが考えられる。
それでは、ケアマネジャーと契約せず、セルフケアプランにした場合はどうなるか。
利用者が毎月自分で役所にチェックに行く義務が発生するが、そもそも独居や認知症の人には事実上そのようなことは不可能なうえ、サービス担当者会議開催の義務もなくなり、ケアマネジメントプロセス自体が崩壊し、長い目で見ると介護給付費の増大にもつながることが考えられるという。
いずれの場合も、利用者への生活への影響は計り知れず、財政論ありきで制度の根幹をゆがめることになると、木村氏は強く反対した。
今回の部会では、2012年〜14年までの第5期介護保険事業計画の第1号被保険者(65歳以上)介護保険料の試算も示された。それによると、自然増に加えて介護報酬プラス改定(100円程度)、ユニット型個室の居住費の軽減(10円程度)などの上乗せ分をトータルすると、現在より約1,000円上がり、月額5,200円になるという。
これに対して、財政安定化基金の取り崩し(150円程度)、介護給付費準備基金の取り崩し(130円程度)など、細かな軽減措置を講じることで、355円程度が軽減されるが、それでも5,000円をわずかに割り込む4,845円程度の金額になる見通しだ。
この軽減措置には、委員からの反対意見が多数出ている「高所得者の自己負担引き上げ」「居宅介護士縁の自己負担導入」「軽度者の自己負担の引き上げ」も盛り込まれており、これらすべてが実現しても60円程度の軽減にしかならない。
この試算には、公費の負担増は示されておらず、どちらにしても保険料が上がるのであれば、せめて痛みの軽減を図るために公費負担割合も上げてもらいたいとの要望が多くの委員からあがった。