2021年3月末で終了する居宅介護支援事業所の管理者要件に関する経過措置について、厚生労働省は15日の社会保障審議会介護給付費分科会で、主任ケアマネジャーの資格を持たない人が、同じ事業所で管理者を続ける場合に限り、経過措置の期限を6年延長することを提案し、了承された。同年4月以降に新たに管理者になる場合は、主任ケアマネの資格が必要だが、同省は、管理者の突然の退職など、不測の事態については、要件の適用を一定期間猶予する方針。
管理者要件の経過措置について議論した分科会
厚労省は今年8~9月、すべての居宅介護支援事業所を対象に調査を実施(回収率82.4%)。その結果、同年7月末現在、管理者が主任ケアマネの事業所は全体の59.1%で、前年の調査から7.9ポイント上昇した一方、管理者が主任ケアマネではない事業所のうち、21年3月末までに主任ケアマネ研修の修了を見込んでいる事業所は半数に満たなかった。
主任ケアマネ研修の修了が見込めない理由(「わからない」と回答した事業所を含む)としては、受講要件の一つとなっている「実務経験年数5年以上」を挙げる事業所が最も多かった。同省が、主任ケアマネではない管理者の経験年数を調べたところ、約4分の1の事業所では、21年3月末までに「5年以上」を満たすことができず、このうち約4割は「一人ケアマネ事業所」であることもわかった。
■山間部などの事業所に例外措置も
こうした調査結果を踏まえ、同省は、21年3月末から5年間の実務経験を積むことを想定し、1年の猶予期間を含む6年間、管理者要件の適用を先延ばしすることを提案。主任ケアマネではない管理者が21年4月以降も、同じ事業所で管理者を続けることが条件で、新たに管理者になる場合は、主任ケアマネの資格を求める。
主任ケアマネが管理者を務める事業所で、管理者が突然辞めたり亡くなったりした場合などに備え、同省は、不測の事態が起こった事業所を救済する案も併せて示した。事業所側が、管理者要件を満たせなくなった理由と「改善計画書」(仮称)を保険者に届け出れば、管理者要件の適用を1年間猶予するというものだ。
さらに、「特別地域居宅介護支援加算」や中山間地域などで「小規模事業所加算」を取得している事業所については、主任ケアマネの資格を持たない管理者を容認する例外措置を設けることも提案した。
■不測の事態の猶予、「1年は短すぎる」
経過措置の期間を6年延長する案に対して異論は出なかったが、不測の事態が起こった事業所への救済措置の期間については、複数の委員から「1年は短すぎる」との声が上がった。
全国老人福祉施設協議会理事の小泉立志委員は、「不測の事態が起きた時期にもよるが、実務経験年数5年以上の要件があるため、容易に対応できない場合もあると推測される」と指摘。また、日本医師会常任理事の江澤和彦委員は、「不要な主任ケアマネの引き抜きや無意味な争奪戦は、地域にとって必ずしもいいことではない。地域の実情を十分勘案してほしい」と求めた。
一方、離島や山間部など、一部の事業所を例外とする案に関しては、ケアマネジメントの質を懸念する声も。日本看護協会常任理事の岡島さおり委員は、「やはり利用者の観点から考えると、こういう地域だけ、主任ケアマネが管理者ではなくていいという道を残すのは、当初定めた目標と違ってくるのではないか」などと指摘した。
日本介護支援専門員協会副会長の濱田和則委員は、「最近では、Eラーニングなど、さまざまな受講方法も開発されている。都道府県も受講要件の見直しを進めているので、引き続き(主任ケアマネの)配置が進むよう、われわれとしても努力してまいりたい」と述べた。
この日の議論を踏まえ、厚労省は、年内にも開く次回会合で修正案を示す方針で、そこで合意が得られれば、部会への諮問・答申を経て、来年中に省令を改正する見通し。