介護保険制度改正の議論が続く社会保障審議会介護保険部会で28日、改めてケアプランの有料化の是非が議題として取り上げられた。この日も、賛成する委員と反対する委員の間で意見が割れ、議論は平行線で終わった。ただし委員からは、いきなり1割負担を求めるのではなく、所得などにあわせて定額の負担を求める案も出るなど、導入に向けた具体的な提案もあった。同部会の意見のとりまとめは年末にも行われる予定で、ケアプラン有料化をめぐる議論は佳境を迎える。
今年3月末現在、居宅介護支援費を請求している事業所の数は約4万事業所、利用者の数は約269万人に上り、いずれも増加傾向にある。そして介護予防支援費を合わせた居宅介護支援費は5013億円(昨年3月末現在)に達する。
財務省は、この巨大な居宅介護支援費に注目。「利用者自身がケアプランに関心を持つ仕組みとした方がサービスの質の向上につながる」とした上で、ケアマネジメントに利用者負担の導入を提案し続けている。さらに政府が定めた「骨太方針2018」や「改革工程表2018」でも、ケアプランの給付の在り方を検討する趣旨の内容が盛り込まれた。
こうした政府や財務省の方針を踏まえ、厚労省も、ケアマネジメントへの利用者負担の導入の是非を次の介護保険制度改正の論点として示している。
(社会保障審議会介護保険部会)
■制度誕生から20年「負担導入もやむを得ない」
28日の議論では、安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)が「現役世代の理解も得られやすい。前向きに検討すべき」と、その導入に賛成。岡良廣委員(日本商工会議所社会保障専門委員会委員)や河本滋史委員(健康保険組合連合会常務理事)も同様に導入に賛成する姿勢を示した。井上隆委員(日本経済団体連合会常務理事)も「介護保険制が誕生し、もうすぐ20年が経つ。ケアプランへの利用者負担導入もやむを得ない」と述べた。
■「ケアマネジメントが揺らぐと介護保険制度そのものが揺らぐ」
一方、石本淳也委員(日本介護福祉士会会長)は「有料化を導入することで、利用者が被る不利益が十分に検証されていない。その状況での導入は正しいことではない」と反対する姿勢を明示した。
濱田和則委員(日本介護支援専門員協会副会長)は、ケアマネジメントが揺らぐと介護保険制度そのものが揺らぐと指摘。さらにケアマネジャーへの相談が有料化になれば、他の窓口への負担が増大する恐れもあるとし、「可能であれば今の仕組みを維持してほしい」と訴えた。
■「1000円」「500円」といった定額課金の提案も
武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)は、有料化に伴い、本人より家族の意向を反映したケアプランが増える恐れがあると指摘。久保芳信委員(UAゼンセン日本介護クラフトユニオン会長)も、自立支援につながらない「いいなりプラン」が増える可能性などを指摘し、いずれも慎重な検討を求めた。
桝田和平委員(全国老人福祉施設協議会介護保険事業等経営委員会委員長)は、他の介護保険サービスのように、費用全体の1割分を負担してもらうのではなく、一定額の負担を求める仕組みの導入を提案。具体的な金額の例として1000円を示したほか、所得の低い方は500円にする案も示した。