自立支援を目指したケアマネジメントを実現するため、市区町村が取り組む「ケアプラン点検」。しかし、人口が多い自治体ほど、その点検率は低くなるとするデータを厚生労働省が発表した。人口と取り組みの実施状況が“反比例”する傾向は、地域ケア会議での個別事例の検討件数でも見られた。
「ケアプラン点検」の実施状況は、高齢者の自立支援や重度化防止に関する自治体の取り組みを後押しするための「保険者機能強化推進交付金」(交付金)の指標の一つとなっている。
厚労省は、介護保険法改正に向けた議論が行われている社会保障審議会介護保険部会に、交付金に関する論点などを提示。「ケアプラン点検」の実施状況や「地域ケア会議における個別事例の検討の頻度」、「住民主体の通いの場への65歳以上の人の参加者数」についても参考資料として示した。
このうち、「ケアプラン点検」については、2018年度の後半分のケアプランの総数に対し、点検を実施したプランの比率(点検率)を、各自治体が算出している。厚労省は、そのデータを、自治体の規模に合わせて分析した。
具体的には、自治体を「10万人以上」「5万人~10万人未満」「1万人~5万人未満」「1万人未満」に区分。それぞれのグループの実施率nの上位3割と、上位5割の平均値を算出し、比較した。
■ケアプランの点検率に8倍もの差
その結果、人口規模が大きな自治体ほど、ケアプランの点検率は低くなる結果が示された=表1=。人口規模が「10万人以上」の自治体では、「1万人未満」の自治体に比べて、8分の1からの4分の1程度の点検率にとどまっていた。
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また厚労省は、人口規模が大きな自治体ほど、「地域ケア会議における個別事例の検討の頻度」が低くなるデータ=表2=を提示。さらに高齢者人口に対する「通いの場」の参加者の比率も、自治体の人口が増えるほど、低下する傾向があることも示した。=表3=
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■ケアプラン点検にAIなどの積極活用求める意見も
こうしたデータを踏まえた議論では、委員から人口規模が大きいほど、取り組みが難しくなる点を課題とする声が上がった。また齋藤訓子委員(日本看護協会副会長)は、「(ケアプラン点検に)AIやIoTを導入する(ことを促進する)仕組みが必要ではないか」と提言した。