厚生労働省は29日の社会保障審議会介護保険部会で、次の介護保険制度改正に向けた論点を示した。今年2月以降、5回にわたって行われた議論の内容を踏まえたもので、ケアマネジメントの給付のあり方についても盛り込まれた。同省では、年末までに結論を出し、年明けの通常国会に介護保険法の改正案を提出する方針で、“ケアプラン有料化”の議論は緊迫した局面を迎えている。
“ケアプラン有料化”の議論が本格化した部会
居宅介護支援費と介護予防支援費は、介護を必要になった人がサービスを受けやすいようにするため、介護保険制度の創設時から、すべて保険料と税金で賄われている。昨年4月現在、居宅介護支援費を請求している事業所の数は約4万事業所、利用者の数は約265万人に上り、いずれも増加傾向にある。
“ケアプラン有料化”が論点に入った背景には、財務省側の強い意向がある。2017年度の居宅介護支援費は4481億円に上り、介護予防支援費を合わせると、ここ数年、約4900億円で推移している=グラフ=。社会保障財政がひっ迫する中、ケアマネジメントに利用者負担を導入することで、新たな財源を確保しようというわけだ。
厚労省はこの日、「ケアマネジメントに関する給付のあり方について、これまでの議論等の経緯や、居宅介護支援(ケアマネジメント)の実施状況、自立支援・重度化防止の実現に向けた質の高いケアマネジメントの実現等の観点を踏まえ、どのように考えるか」とする論点を示した。
これに対して委員の反応は分かれた。日本介護支援専門員協会副会長の濱田和則委員は、「これまでケアマネジメントの利用の下に、うまく自立支援の調整が図られてきた経緯がある」などと指摘し、現行制度の維持を要望。また、「認知症の人と家族の会」常任理事の花俣ふみ代委員も、「利用者負担が増えることは、これ以上容認できない」として、強く反対した。
一方、経団連・常務理事の井上隆委員は、介護保険制度の持続可能性の観点から、「見直しが必要だ」と主張した。また、連合・総合政策局生活福祉局長の伊藤彰久委員は、「セルフケアプランが増加した場合、質の確保の点が非常に懸念される。質の高いケアマネジメントの実現の観点から、検討していきたい」と述べた。
“ケアプラン有料化”をめぐっては、過去に介護保険部会などで何度も議論されてきたが、賛成派と反対派の意見が折り合わず、最終的に実施が見送られてきた。ただ、社会保障財政を取り巻く状況が年々厳しさを増す中、今回も同じように決着するかは不透明だ。