根本匠厚生労働相は4日、認知症施策の充実を目指す新たな「大綱」には、有病率の引き下げに関するKPI(重要業績指標)を盛り込まない方針を示した。
先月に示された「大綱」の素案には、予防の取り組みを進めることで、「70歳代の認知症の有病率を10年間で1割低下させる」とするKPIを設定することが示された。さらに素案では、2025年までに70代の認知症の有病率を6%引き下げることなども記載された。
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認知症の予防の取り組みに数値目標を設けることに対し、認知症の当事者やその家族からは、「認知症の人は努力が足りない人と受け止められかねない」「認知症になるのは自己責任という意識が広がってしまう」との懸念の声が上がっていた。
■認知症予防の定義は「発症を遅らせ、進行を緩やかにする」
今回のKPIの取り下げは、こうした関係者の声を踏まえたもの。4日の記者会見で根本厚労相は、「認知症の予防の定義として、認知症にならないという意味ではなくて、認知症になるのを遅らせる、認知症になっても進行を緩やかにするという意味であることを(大綱の素案に)明記した」と言及。さらに、「認知症の人や家族の視点を重視しながら『共生』と『予防』を車の両輪として推進していきたいと考えている」とも述べた。