日本看護協会(日看協)は、医療ニーズがある利用者を抱えるケアマネジャーに、訪問看護師が相談支援を行うための手引を作成し、公表した。厚生労働省のモデル事業の成果を取りまとめたもので、「看護師はケアマネがノウハウや気付きを得られるよう、補完的な立場で対応する」など、実際の業務における心得なども盛り込まれている。
日看協では昨年10月から12月、22カ所の訪問看護ステーションなどでモデル事業を実施。地域のケアマネを対象とした相談窓口を設置し、利用者の医療ニーズのアセスメントなどについて、看護の視点から助言した。必要に応じて看護師がケアマネと共に利用者宅に訪問し、助言や支援も実施した。
利用したケアマネに評価を複数回答で尋ねたところ、「今後の自身の行動や判断に活かせる助言が得られた」(50.3%)、「疾患や治療方針に対する理解を深められた」(49.2%)、「訪問看護サービス導入の必要性の判断ができた」「利用者の病状の変化に伴うプラン変更の判断ができた」「医師(入院・外来診療)との連携ができた」(いずれも36.3%)などといった声が寄せられた。
■相談窓口、「自治体の独自事業で実施を」
さらに日看協では、「モデル事業で相談窓口を利用したケアマネからは、日頃から利用者をめぐって連携関係のある医療職や地域包括支援センター以外の相談先として、本事業のような相談窓口があれば利用したいという評価が多く寄せられています」と指摘。事業を普及させる必要性を強調した上で、継続的に実施するには「在宅医療・介護連携推進事業や、その他の地域支援事業、自治体の独自事業等での事業化が必要」とした。
相談窓口の具体的な体制などについては、平日の一定時間帯に看護師が専従か専任で対応することが求められると指摘。そのため、訪問看護ステーションなどに委託して実施する場合には、大規模で研修・教育機能を持つなど、一定の要件を満たしたステーションでなければならないとした。
相談対応の範囲については、「病状や医療ニーズのアセスメント、予後予測にもとづく今後の変化やリスクの把握」や「療養環境や、家族・介護者の介護力のアセスメントにもとづくサービス必要量の検討」などを挙げた。
■相談対応する看護師、「ケアマネの有資格者らが望ましい」
実際に相談窓口で対応する看護師については、訪問看護の知識や経験に加えて、地域の医療・介護資源の状況や連携方法の把握、ケアマネジメントへの理解が必要であることから、ケアマネの資格を持つ人や、相談員などの研修受講者が望ましいとしている。
さらに、相談対応に当たる看護師の「心得」として、次の条件を示している。
・ケアマネが今後の業務に生かせる気付きやノウハウを得られるよう、補完的な立場で対応する
・利用者・家族への説明や、主治医との調整を相談窓口の看護師が支援する場合も、ケアマネの業務を単に「代行」するのではなく、これらの業務を円滑に進めるための工夫や留意点を助言する
・諸事情により医療ニーズへの対応やサービスの利用調整が遅れているケースについて、「どうしてもっと早く連絡しないのか」「なぜ放っておいたのか」など、相談者を責める対応はしない
・利用者が必要なサービスを拒否する、家族の理解が得られないなどの困難ケースの相談については、対応に苦慮している相談者の立場に立ち、ケアマネの業務範囲でしっかり対応ができている点を支持し理解した上で、今後(他機関・他職種との連携も含めて)どのような対応策が可能かを一緒に検討する
・公正中立な立場で、相談ケースにおける利用者の課題解決を第一義とし、利用者にとっての有効性や利便性を考えた対応策を提案する