高齢の親が収入の無い子どもの生活を支える「8050問題」が深刻化する中、地域包括支援センターの8割超が、無職の子どもと同居する高齢者への支援の経験があることが、厚生労働省の助成でNPO法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」が行った初の実態調査で分かった。
調査は昨年11~12月、全国に約5100カ所ある地域包括支援センターから無作為抽出した844カ所を対象に行われ、このうち31.2%に当たる263カ所から有効回答を得た。
無職の子どもと同居する高齢者を支援した事例の有無を尋ねたところ、「ある」は全体の83.7%(220カ所)に上った。
支援経験の具体例を調べると、約7割に当たる153カ所では、部屋や家の外にほとんど出なかったり、近くのコンビニ以外に外出しない状態が半年以上続いていたり、内閣府が定義する「ひきこもり」の子どもがいることが分かった。
具体例を見ると、夫から妻の認知症の相談を受けたことで、同居する息子のひきこもりが判明したケースや、母親のデイサービスの送り出しの際、介助が必要になったため、子どもが玄関まで出てくるようになった事例など、高齢者の介護サービスの利用が発見のきっかけとなっていた事例があった。
■支援体制の不足指摘する声も
一方、「40歳以上のひきこもりへの支援制度などが確立されておらず、包括に一任されることが増えている」「『地域包括支援センターは高齢者だけの支援センターだから、障がいのある40代の方の支援はできません』や『障害者支援センターなので、高齢者のことはしません』などの意見を日常的に耳にする」など、支援体制の不足を指摘する声も上がった。
調査を担当した愛知教育大の川北稔准教授は、「『8050問題』が地域で深刻化しているが、ケアマネジャーは『50』の専門家ではないので、他の専門家と一緒に訪問するなど、できるだけ早く『50』の支援につなげていただきたい」と話している。