ケアマネと薬剤師の連携を促進、注目の“古河モデル”とは?

昨年4月の運営基準の改正に伴い、ケアマネジャーが薬に関する助言が必要だと判断した場合、かかりつけの医師や薬剤師に対して、利用者の生活情報を提供することが義務付けられた。茨城県古河市では同年秋から、地域のケアマネ会と薬剤師会がタッグを組み、医師も巻き込んだ新たな取り組みが始まっている。さまざまな種類の薬を飲むことで副作用などが起こる「ポリファーマシー」が問題となる中、ケアマネと薬剤師の連携における一つのモデルとなりそうだ。

■薬剤師「支援必要」、ケアマネ「不要」

介護支援専門員協会・古河地区会と古河薬剤師会は一昨年秋、市内にある6つの居宅介護支援事業所を対象に、利用者の服薬管理に関する実態調査を行った。ケアマネ31人が担当する総勢828人の利用者に対して、服薬の現状や薬剤師のサポートの需要を探る大規模なものだった。

実態調査では、▽ケアマネの気づき▽利用者の状況▽薬剤師のサポート―のそれぞれの項目について、ケアマネからチェックを入れてもらったが、「薬剤師のサポート」の中に、あえて「当面不要」という“仕掛け”を設けた=図=。ケアマネが問題視していなくても、薬剤師の支援が必要なケースがあることをあぶり出すためだった。



結果を見ると、「ケアマネの気づき」と「利用者の状況」の両方にチェックが入っている場合は、「当面不要」の割合が33.3%だったのに対し、「利用者の状況」のみでは93.4%にまで跳ね上がった=グラフ=。これは、薬剤師による服薬状況のアセスメントが必要であっても、多くのケアマネは、それを経ずに「当面不要」と判断してしまっていることを意味するが、裏を返すと、ケアマネが持つ服薬管理の情報が、薬局の現場で十分に生かされていないともいえる。



ケアマネが起点となって、医師や薬剤師などの専門職に情報を行き渡らせる仕組みが必要だということがよく分かった」。古河地区会のトップで、県介護支援専門員協会の会長も務める赤荻栄一氏はこう振り返る。

■真の目的はケアマネとの“つながり”

実態調査の結果を踏まえ、古河地区会と古河薬剤師会では昨年10月から、新たな取り組みをスタートさせる。参加しているのは、市内の居宅介護支援事業所の3割超に当たる15事業所と、市内の薬局の9割を占める66薬局だ。

ケアマネが使用するのが、「在宅服薬気づきシート」=図=。シートには、残薬や複数医療機関の受診といった6つのチェック項目があり、どれか一つにチェックが入ると、ケアマネから利用者の「かかりつけ薬局」にファクスする運用になっている。



※クリックで拡大

薬剤師に連絡すべきかどうか、ケアマネの判断を差し挟む余地をなくし、薬の専門家にスピーディーに対応を委ねるためだ。昨年10~12月の「第1期」では、ケアマネが担当する1478人の利用者のうち、22.4%に当たる360人の情報が薬局側(54薬局)へ送られた。

かかりつけ薬局」の定義は、「利用者がよく訪れていること」だが、複数の薬局を利用していたり、すぐに思い浮かばなかったりする場合は、ケアマネが古河薬剤師会の事務局に相談することになっている。

ケアマネからファクスを受けた薬剤師は、チェック項目の内容から問題の有無を調べた上で、今後の課題や対応方針などをシートに記入。利用者へのアセスメントが必要だと判断すれば、担当のケアマネに連絡し、居宅療養管理指導が必要かどうかのコメントも書き加える。

「利用者さんのご自宅にいきなり伺うと、『なぜ薬剤師が情報を持ってやって来るんだ!』とお怒りになるかもしれない。薬剤師の単独プレーにならないようにする意味もありますが、ケアマネとつながりを持つことが真の目的でもあるので、こちらから積極的に連絡するようにしています」。古河薬剤師会の高橋真吾会長はこう話す。

かかりつけ医の情報もケアマネに伝達

処方の見直しなどでかかりつけ医への相談が必要だと判断した場合は、薬剤師から医師に連絡。ケアマネと共有すべき内容をシートに記入した上で、最終的にケアマネにファクスを返送する。これにより、ケアマネの情報はかかりつけ医に、かかりつけ医の情報はケアマネに間接的に伝わり、ケアプランに反映させることもできるというわけだ。

こうした三者の連携が実を結び、糖尿病の利用者の服薬管理が改善した事例もある。この利用者は薬をほとんど飲まず、大量の残薬を抱えていたが、かかりつけ医と薬剤師を巻き込んで説得を続けた結果、「教育入院プログラム」への参加につながったという。

古河薬剤師会が40薬局分(236人分)のデータを分析したところ、医師との連携に至ったケースは21件(8.9%)、薬剤師による残薬の対応につながった事例は10件(4.2%)あったという。

医師でもある赤荻会長は、「かかりつけ医の意見も入るところが、この取り組みの眼目。多くのケアマネは、医師に対して“敷居の高さ”を感じている。ケアマネ、かかりつけ医、薬剤師が同じ視点を持ってやることで、地域包括ケアシステムにおける医療介護連携の先駆けにしていきたい」と力を込める。

■「薬剤師はすごい!」、専門性の再評価も

実際、こうした取り組みがきっかけとなり、ケアマネと薬剤師の距離は縮まっている。古河地区会と古河薬剤師会では合同の研修会も開き、グループワークを交えながら、顔の見える関係を構築している。参加したケアマネからは、「薬剤師が持っている薬の情報は本当にすごい」といった声が上がるなど、互いの専門性の再評価にもつながっているという。

ケアマネは、業務以外で医療専門職と関わりを持つことは少ない。いつも利用者のことを考えているので、その必要性は感じていても、なかなか連携できないのが実態だ。こうした形で薬剤師と関係を持てて、心底良かったと思っているはず」と赤荻会長。

一方の高橋会長は、「ケアマネから服薬情報を提供してもらうことで、在宅の薬の課題を整理することができるようになった。その情報を、いかに服薬コントロールなどにつなげるか。薬剤師側のスキルが試されているともいえる」と指摘する。

今年4月には、「第2期」が始まった。古河地区会と古河薬剤師会では、来年3月まで事業を続け、論文としてまとめる予定で、今後、学会などに発表するとしている。


CMOの取材に応じた赤荻会長=右=と高橋会長

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