社会保障審議会(社保審)の介護保険部会は25日、2021年度から始まる第8期介護保険事業計画に向けた検討を開始した。厚生労働省では、年内に議論を取りまとめ、検討内容を盛り込んだ介護保険法の改正案を年明けの通常国会に提出する方針。
次期計画に向けた検討を始めた部会
厚労省側は今回の計画見直しについて、高齢者人口がピークを迎える40年ごろも視野に入れている。政府が進める社会保障と税の一体改革は、団塊の世代がすべて75歳以上となる25年を見据えており、今年秋に予定されている消費税率の引き上げによって一段落する。だが、25年以降は、高齢者人口の増加は緩やかになる一方、支え手となる生産年齢人口の減少が加速する。
この日の会合で同省側は、現役世代の減少に伴う「社会の活力維持・向上」と「医療・介護サービスの確保」という新たな課題に対応するため、▽健康予防・健康づくりの推進▽保険者機能の強化▽地域包括ケアシステムの推進▽認知症の「共生」「予防」の推進▽持続可能な制度の再構築・介護現場の革新―の5つの議論を優先させることを提案し、大筋で了承された。
委員からは、現役世代からの保険料収入の激減などで、将来的に介護保険制度の維持が困難になるとの懸念が続出し、給付と負担の在り方の見直しを求める声が相次いだほか、介護の担い手を確保するための働き方改革の必要性などを指摘する意見も多かった。
■AI活用に積極的に関与―ケアマネ協会・小原氏
同部会では来月以降、前述した5項目について優先的に議論した後、個別のテーマの話し合いに移る。ケアマネジャー関連で焦点となるのが、いわゆる“ケアプラン有料化”とAI(人工知能)を活用した科学的なケアプランの実用化だ。
日本介護支援専門員協会から出席した小原秀和副会長は、「介護支援専門員に求められる役割は、ケアマネジメントだけでなく、利用者の生活支援や地域のマネジメントにまで拡大していきている。その中で、ケアプランを作成・支援していくAIの活用については、協会としても有望と考え、前向きに検討を進めている」と述べ、今後AIの活用に積極的に関与していく考えを表明した。
一方、“ケアプラン有料化”に対しては「利用者さんが相談しにくくなり、結果的に課題の発見が遅れたり、サービスの提供が遅れたりする状況は、国民の利益にならない」などと指摘し、同協会として改めて反対の姿勢を示した。