新たな認知症対策の総合戦略(新オレンジプラン)の実現に向け、国立長寿医療研究センターの「認知症医療介護推進会議」は、認知症の人やその家族の相談に応じる専門職や関係機関の連携や、ロボット開発などの技術革新に関する提言をまとめた。
同会議では、提言の基本的な考え方として、▽「認知症の人」と「その家族」は、ニーズや要望も異なる別の支援対象者であることを明確にする▽認知症の人の視点に立ち、その意見を聞きながら、支援や技術革新を進める▽認知症の人を「被支援者」としてのみ捉えるのではなく、本人の能力を生かした地域での共生を目指す―の3つを掲げた。
その上で、(1)専門職や関係機関間の連携推進(2)ロボットの開発やICT(情報通信技術)の活用、創薬などの技術革新―の2つの視点で、国や自治体に要望した。
(1)については、現状の相談機能が不十分だとし、認知症の初期段階の相談先となる認知症疾患医療センターや医療機関、地域包括支援センターなどで働く専門職の対応力の向上を含め、機能強化の必要性に触れた。
また、認知症の人は、医療と介護などのサービスを併せて利用していることも多いため、サービスの内容や生活の場所が変わっても、適切な支援を受けられることを共通の目標として掲げるとともに、サービスの内容を分かりやすく示すべきとした。
さらに、認知症の人の家庭での状況や必要な医療・介護に関する情報などをまとめた「連携シート」を全国に普及させるよう要望。また、認知症の人やその家族を支えるため、専門職や関係機関が連携した場合の診療・介護報酬上の評価の検討を求める一方、同会議でも今後、連携の効果を測定するためのアウトカム評価に関する研究を進めるとした。
(2)については、開発段階から認知症の人の意見を踏まえた技術革新を進める必要性を指摘。研究者や開発者に対しては、最新の技術に関する情報を患者やその家族に分かりやすく伝えるとともに、情報を得た人の相談や生活・療養の指導体制を整えるよう求めた。
同会議は6年前の秋に設立。現在、認知症の関連学会、日本医師会や日本看護協会などの職能団体、日本認知症グループホーム協会や全国老人福祉施設協議会といった介護関連団体など22の団体が参加している。