ケアマネ協会常任理事の吉良氏が講演
6月20日、都内で渋谷区介護支援専門員等研修会が開かれ、京都介護医療総研株式会社代表、介護支援専門員の吉良厚子氏が講演を行った。同氏は、スマイルケア食の普及推進委員も務めており、ケアマネジャーの立場から高齢者の食問題に取り組んでいる。
この日の研修には、渋谷区のケアマネジャー100名あまりが参加。高齢者にとって大きな問題となる低栄養について理解を深めた。
メタボよりも低栄養に注意
高齢者の低栄養は、死亡率アップにつながることがわかっている。しかし、平成25年国民健康・栄養調査結果によれば、65歳以上の高齢者の16.8%、85歳以上では3割もの人が低栄養状態だという。
これについて同氏は、メタボリックシンドロームの考えが浸透しすぎたことを理由としてあげた。太ることが健康によくないという考えが広まる一方で、痩せることのリスクが見逃されているのだ。
中高年のメタボ対策は必要だが、高齢者に限ってみれば、低栄養は、免疫力や体力の低下、あるいは認知機能の低下、閉じこもり、骨折などにつながりうる。これらは最終的に死亡リスクを高める要因となるため、低栄養の予防は高齢者に特に重要だ。
そのためケアマネジャーは、アセスメントにおいて食事内容まで踏み込んでいくことが必要なのだと説明した。
では、低栄養になりやすいのはどのような人たちだろうか。具体的には、以下のようなケースがあげられた。
・がんや胃腸疾患などの治療・手術後の人
・呼吸器系の病気の人や在宅酸素療法の人
・糖尿病や腎臓病などで食事療法をしている人
・メタボ警戒で油脂や卵を控えている人や粗食の人
・下痢やかぜなどの後
・うつや認知機能低下など
・高齢者だけのひとり暮らし・ふたり暮らし
・食べ物の好き嫌いが多い
また、「活動量が少ないから小食でもいい」「太っているよりも痩せているほうがまし」「体調は医師と薬が治すもの」と考えている人も要注意という。生きる力は食事から得られるということを理解していないからだ。
ケアマネとしての関わり方
一方で、アセスメントの難しさも認めた。「なんとなく元気がない」という理由から認知症を疑ってみたが、実際には脱水だったという例は、自身も経験しているという。
また、水分をとれば食事が入らず、食事をとれば満腹で水分が入らないという高齢者も少なくなく、量の兼ね合いは難しいという。そのような場合には、管理の行き届いたデイサービスを利用するとよいようだ。
人生の生きがいだった食事づくりが、麻痺などで思うようにできなくなるというのもよくあるケース。そのような場合には、レトルトや缶詰のような簡単に調理できるものを提案するとよい。満足度は下がるかもしれないが、調理をしていると本人が感じられることが重要なのだという。
さらに今後は、独立管理栄養士の訪問手配、介護保険外サービスやスマイルケア食の提案などができることも、ケアマネジャーに求められるようになるだろうと述べた。
キユーピー介護食の試食会は盛況
吉良氏の講演後は、キユーピー介護食の試食会が行われた。
レトルト食品や濃厚流動食、ゼリー飲料、とろみ剤など各種商品が紹介され、参加したケアマネジャーはそれぞれの味や食感を確かめた。
キユーピーが介護食品の開発に乗り出して約18年。その間、幾度となく改良が重ねられてきたようだ。
キユーピー担当者は、「すべての人においしいと思われる食品をつくるのはなかなか難しい」と開発の苦労を話す。高齢者ほど好みや習慣が定着してしまっているからだ。
しかし苦労の甲斐あってか、試食会ではあちこちから「おいしい」という声が聞こえ、試食皿に次々と手を伸ばす姿が見られた。