国民生活センターは、9月11日、認知症などの理由によって判断能力が不十分な状態になっている高齢者(以下「認知症等高齢者」)の消費者トラブルが、2013年度に過去最悪の1万件超となったことを発表した。
全国の消費生活センター等に寄せられた60歳以上の認知症等高齢者の相談件数は、2008年度までは減少していたものの、2009年度に増加に転じ、2013年度には1万件を超えて過去最悪となった。
年代別にみると、特に80歳以上が急増しており、トラブルの高齢化が急速に進んでいる。相談者の内訳は、家族やホームヘルパーなど、認知症等高齢者本人以外からの相談が約8割を占めており、周囲のサポートがなければ、被害が潜在化してしまうおそれが高い。
【実際の相談事例】
■事例1 自宅から健康食品や契約書などが見つかった
父と二人暮らしをしている認知症の母の自宅から健康食品とその契約書や払込票が見つかり、母が電話勧誘で約5万円の健康食品を購入していたことがわかった。支払いは分割払いになっており、1回目はすでに代引配達で約1万4,000円を支払っている。
母はこれまでにも色々な業者から電話勧誘によって健康食品を購入しているが、電話を切ると今まで話していたことを全く覚えていない状況だ。残金を支払わなくてはならないか。
(相談受付:2014年7月、契約者:70歳代、女性、京都府)
■事例2 訪問販売で契約した大量のふとんが居室に置いてあるのに気づいた
一人暮らしをしていた認知症の母の家を片付けていたところ、大量の羽毛ふとん等が部屋に置いてあることに気づいた。訪問販売で次々と10件以上も契約させられており、総額で約340万円もの契約(既支払金額は約320万円)になっていることがわかった。解約して返金を求めたい。
(相談受付:2014年4月、契約者:70歳代、女性、石川県)
【認知症等高齢者の消費者トラブルにおける問題点】
■トラブルや被害にあいやすいうえに、トラブル等にあっているという認識が低く、問題が潜在化しやすい
■特に一人暮らしの高齢者がトラブルや被害にあいやすく、周囲に気づかれにくい
■次々販売により被害が拡大し、支払金額も高額になる
■契約した経緯の証明や、判断能力が不十分であったことの証明が難しい
■認知症等高齢者の弱みにつけこんだ悪質業者に狙われやすい
【高齢者を見守る家族や周囲の人へのアドバイス】
■見守りから相談までの流れ
1)日頃から高齢者本人の居室・居宅の様子、言動や態度に変化や不審な点がないか気をつける
2)少しでも変化に気づいたら高齢者本人に声をかけ、経緯などを確認する
3)トラブルや被害にあっているとわかったら、すぐに消費生活センター等に相談する
■トラブルを防止するための日頃の備え
1)地域の見守り活動や、成年後見制度の利用も検討する
2)通話録音装置などの新しい「防犯アイテム」を利用する方法もある
3)認知症等の症状がみられる場合は、医師の診断書を入手しておく
【“見守り”と“気づき”のポイント(チェックリスト)】
■居室・居宅の様子
・不審な契約書、請求書などの書面や、宅配業者の不在通知などはないか。
・不審な健康食品やカニなどがないか。
・新品のふとんなど、同じような商品が大量にないか。
・屋根や外壁、電話機周辺などに不審な工事の形跡がみられないか。
・通信販売のカタログやダイレクトメールなどが大量にないか。
・複数社から配達された新聞や景品類などがないか。
・不審な業者が出入りしている形跡はないか。
■高齢者本人の言動や態度など
・不審な電話のやり取りや、電話口で困っている様子はないか。
・生活費が不足するなど、お金に困っている様子はないか。
・預金通帳などに不審な出金の記録はないか。
【見守りから相談までの流れ】
■見守り・気づき
高齢者本人の居室・居宅の様子、言動や態度に変化や不審な点はないか。
・不審な契約書や書面
・大量の商品、工事の形跡
・不審な電話のやり取りや困っている様子
■声かけ・確認
少しでも変化に気づいたら、高齢者本人に声をかける。
経緯を確認し、メモしておく。
・「何か困っていませんか?」
・「業者から勧誘されていませんか?」
・「本当に必要な契約ですか?」
■相談
トラブルや被害にあっているとわかったら、すぐに消費生活センター等に相談する。
家族やホームヘルパー、地域包括支援センターなどからでも相談することができる。
認知症等高齢者の消費者トラブルを防ぐためには、家族や周囲による“見守り”と“気づき”が重要である。
いま一度、不審なことはないか見直して、トラブルを未然に防いでいただきたい。
◎独立行政法人 国民生活センター
http://www.kokusen.go.jp/ncac_index.html