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「認知症」の高齢者は、判断力も分別もない存在なのか？――「認知症ケアの最前線」講演会レポ（2）

8月18日、東京都内で雲母書房の主催の「認知症ケアの最前線-三好春樹＋宅老所よりあい講演会」が行われた。

「生活とリハビリ研究所」主宰の三好春樹氏に続き、「宅老所よりあい」の村瀬孝生氏（第2よりあい所長）、さらに下村恵美子氏（よりあい代表）が登壇し、認知症ケアと看取りの実情を、豊富なエピソードとともに語った。

三好氏が講演の最後に、「これから話される『よりあい』の村瀬さんと下村さんは、常に個別性を大切にし、抽象に陥らない」と紹介したとおり、村瀬氏・下村氏の講演では、「〇〇さん」「△△さん」というお年寄りの姿が生き生きと描写され、ケーススタディや概念論とは違い、ケアの温もりがダイレクトに伝わるものとなった。

宅老所の責任者として、高齢者の生活を支える村瀬氏は、認知症の「記憶障害」や「妄想」と言われる言動を「本当にそれだけなのか？」と問いかけた。

新人介護職員だったころ、村瀬氏を「御し易い人物」として使い、お菓子を手に入れたおじいさんの「判断力」や、認知症で要介護度4なのに、病院での長い時間待ちにじっと耐え、付き添いの村瀬氏たちに思いやりを示したおばあさんの「分別」など、実際のエピソードを交えながら語った。
「時間と場所の概念がわからなくなり、不可思議な言動をするのも、必死につじつま合わせをしているからで、それは知的能力があるから。つじつま合わせの仕方にも、その人の個性が出ます」

その人の個性も含めて正常か異常か、健康か病気かで振り分けてしまう医療の「狭さ」。そして、介護の専門職においても同様の狭さが目立つようになっていると、村瀬氏は危惧する。

「普通に歳をとった人も認知症にしておかないと介護保険の制度的利用ができず、地域で存在できなくなっていると感じます。しかし、記憶がなくなり、今までの習慣がなくなってしまった人も、ぼくらが参加して日常の繰り返しにちゃんと付き合っていけば、また新しい習慣ができ、生活していくことができるんです」

◎雲母書房

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