医療用サプリメントメーカーの太陽化学株式会社は、10月18日(火)、排便コントロール向上セミナー「オムツ・下剤ゼロ運動への取り組みについて」を開催した。特別養護老人ホーム世田谷区立きたざわ苑の施設長・岩上広一氏による講演に続いて、きたざわ苑・看護師の安田博子氏が登壇。「下剤ゼロへの取り組み〜迷いから実現へ〜」の演題で、下剤廃止の取り組みの実際を報告した。
オムツ外しで重要な「下剤廃止」は、看護チームが中心となり、平成20年11月にスタートした。当時のきたざわ苑では、入所者100名のうち66名が何らかの下剤を飲み、便秘の症状があれば下剤を追加。その結果、多くの利用者が軟便や水様便となり、便失禁を起こし、さらにはオムツを使用する状態だったという。
「配置医の協力を得て、まずは61名の下剤を中止することに。利用者ひとりひとりの排便ケアアセスメントと排便ケアチャートを作成し、食事や水分、運動、ファイバー(食物繊維)の量などを決め、自然な排便促進のケアを行いました」と安田氏は当時を振り返った。
同時に、各職種が参加する「下剤廃止検討委員会」を設置し、問題点の検討やケアについて意思統一を図った。また、同委員会において、使用するファイバーを太陽化学の「サンファイバー」とすることを決定した。すると、下剤廃止3か月で、下剤使用者は4名のみに。それまで18.6%だった普通便が81.4%になり、軟便・水様便は大幅に減少したという。
「便秘がひどく、下剤廃止後のケアに試行錯誤した人もいましたが、そうした経験を経て、100人いれば100通りの排便リズムがあり、下剤廃止で最も重要なことは、入所者それぞれの排便リズム、排便のためのケア方法を見つけ出すこととの結論を得ました」と語るように、下剤廃止を行った結果、排便の時間帯は起床時〜昼食時が55名など、全員が日中の時間帯となり、夜間は0名に。また、入院者が減少するなど、利用者がトータルで元気になったことも確認できたという。
「本当に下剤を廃止できるのだろうか?という迷いからスタートしましたが、利用者の健康に支障がなく、想像以上にスムーズにできたことに驚くとともに、日常的なケアの重要性に改めて気づかされました。この取り組みによって多職種間の連携の必要性、利用者中心の視点の必要性をより強く実感できました」
講演後に設けられた質疑応答タイムでは、特養や老健の看護師や栄養士から、便秘を誘発する精神薬や睡眠薬をやめる時の注意点や、嚥下障害のある場合の水分摂取法などについての質問が多数寄せられ、排便コントロールは利用者のQOLに直結していること、ケアの現場で関心、必要性が高まっていることが伝わってきた。
きたざわ苑
◎世田谷区立きたざわ苑
◎太陽化学株式会社
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