独立ケアマネ・本間清文氏が「ソーシャルケア研究所」を設立

独立型居宅介護支援事業所「ファイト」を運営し、『教科書が教えてくれないケアマネ業務 』『介護の現場がこじれる理由』などの著書の他『ケアマネべんり手帳』の監修作品などもある独立ケアマネの本間清文氏が、この度「ソーシャルケア研究所」を設立する。これにより、2005年より独立型居宅介護支援事業所として運営してきた「介護支援所ファイト」を閉鎖する。

本間氏は、ケアプランが事業者の利益中心で考えたほうが組織的には評価される現実に疑問を抱き、2005年に単独型の居宅介護支援事業所を開設。実践から生まれた著作や、多くのケアマネに支持されているセミナーなどで広く知られている。しかし、「ケアマネジメントという仕事は介護保険制度の要といわれながらも、どれだけきちんと仕事を行なってもまともな給与で職員を雇うなどの自立経営ができない賃金体系になっています。その他、ケアマネジメントを取り巻く矛盾を論証していくために現場の実践とソーシャルアクションにこだわってきましたが、あいも変わらず現場無視で進められていく制度改正論議などを見るにつけ、これまでと同じやり方では何も変わらない」と、この度の判断に至った理由を告白した。

一方で、「ケアマネジメントの実践は存分にやり尽くしたという感もあり、事業所の閉鎖は以前より、いつでもいいと感じていました。ただ、慣れ親しんだ利用者、事業者との深いつながりがあり、それらの縁だけにより、現場に留まっていました」とも語る。

閉鎖決断に至った大きなきっかけは、前回の制度改定の際に浮上した「ケアプラン自己負担」議論だった。「もっともケアマネジメントを必要としているのは誰かといえば、?自分がどんな事で困っているのかという自己分析や要求さえきちんと訴えられない認知症、老々世帯など?困りごとの自己分析ができたとしても、その分析どおりにサービス調整をできなかったり、連絡調整が面倒な人々という優先順位になります。一方、医療連携がスムーズにできない多くの原因は連携に非協力的な医療側の姿勢など制度上の問題であってケアマネジャー自身に大きな問題があるわけではありません。その問題は連携ルートがきちんと制度化されていけばケアマネジメントの必要性は自ずと減っていくはずです」という。

その上で「しっかりした介護者がついているような利用者は、どんなサービスが必要かという自己分析もある程度でき、単純な調整屋としての機能でケアマネジャーは事足りますから、そこにケアプラン自己負担費の議論が出るのは分かります。しかし、それ以前に自分がどういったことが原因で困っているのかさえ分からないような方々も多くおられ、その方々にさえ、現状では利用者本位ではなく、企業の論理で自社サービスをケアプランに位置づけることが少なくない。しかし、要介護状態の老人には、自分のケアプランが企業の論理で組まれ、不当な権利侵害を被っているが自覚できません。その問題を解消するにはケアマネジメントの公正中立性が欠かせないですが、その議論を放っておいたままケアマネジメントの自己負担費を利用者に発生させることは、その人権侵害を既成事実として認めることにつながります。そういったケアマネジメントは誰にもっとも必要なのか、という根本的な議論をおざなりにしたままあのような議論が平然と行わている事実に愕然としました」。

報酬面についても、本来ならば、良質のケアマネジメントを行なうことで報酬を得て、まともな給与で人を雇い人員・設備を増やすという「本来の営業努力などが通用しない制度になっているのも問題です」。それに対し本間氏なりに状況を改善しようと意見発表やソーシャルアクションを起こしてきたが、制度改正に関する議論などを見るにつけ、現場から乖離するばかりの議論のあり方に強い不信感を抱いたようだ。

今後は「これまでケアマネ業務で十分に取り組めなかった他の専門家や実践現場への取材、情報収集にも時間を割き、ケアマネジメントはもちろんのことケアの現場をよくするための方法論を研究、発信してゆきたい。また、それと同時にこれまで少しずつ行なってきた研修事業を充実させ、収益事業としてケアサービスに関する企画、監修などプロデュース事業にも着手してゆきたい」と豊富を語った。

独立ケアマネのオピニオンリーダー的存在でもあった本間氏の事業所閉鎖は、同様の立場のケアマネにとっては、少なからず衝撃的な出来事かもしれない。しかも本間氏は、「この10年、介護ケアマネジメントの現場を取り巻く状況は、確実に悪くなっており、今後、独立ケアマネの事業所は廃業するところが増えるかもしれません」と、厳しい見解を示した。

しかし一方で、「本当にその存在意義が問われているのは独立ケアマネではなく、併設型のケアマネジャーです。なぜなら、制度改正のたびに取り沙汰される『ケアマネ不要論』で言われるところの『ケアマネ』とは、その9割を占めている併設型ケアマネジャーなのですから。独立ケアマネは少なすぎて議論の俎上に登っていませんので。そして、なぜ、今の併設型ケアマネがこれほど社会的評価を得られないのかというと組織と行政の代弁行為に偏った業務配分を行い、利用者やケア現場の代弁を組織や行政、社会に行なっていないからではないでしょうか。医療ソーシャルワーカーしかり施設のケアマネジャーしかり、所属組織の論理を背負わざるをえないソーシャルワーカーは組織の便利屋となりやすく、存在も軽視され、業務負担の割には社会的な評価も得にくいのは必定です。今後、居宅介護支援費の経費削減という観点で長期的にみれば退院調整を中心に行う医療ケアマネジメント福祉ニーズが濃厚な福祉ケアマネジメントに二極化され、単品サービスのみの場合はサービス事業者や利用者自らによるケアマネジメントになっていくのではないでしょうか」と語った。

ブログ版「ファイトほんまの介護支援!」

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