独立行政法人理化学研究所と東海ゴム工業株式会社は、2009年8月に公開したRIBAの後継機として、8月2日、介護支援ロボット「RIBA(リーバ)−II」を開発したと発表した。
このロボットは新開発した柔軟触覚センサを採用して、触覚によるロボット操作、被介護者の体重検知を実現し、さらに腰に2個の前後屈曲関節と補償ばねを導入した新機構を採用、抱き上げ重量を約30%増の80kgにした。これにより、介護施設で最も重労働である床上で寝た状態の人を抱き上げて車いすへ移乗させることを可能となった。
高齢の要介護者の増加に伴い、介護者不足の問題が深刻化し始めている。高齢の要介護者をベッドや床から車いすに移乗させる作業は重労働であるにもかかわらず、1人の介護士が1日に約40回も行っており、その結果、多くの介護士が腰痛などに悩まされている。特に、ベッドからの落下を防ぐため、床上に寝ている認知症患者などを車いすに移乗させるのは2人がかりの重労働となる。これを1人の介護士と1台のロボットの協調作業で実現できれば、省人化だけではなく介護士の負荷軽減にもつながる。
そこで理研と東海ゴム工業は、共同で介護ロボットの研究・実用化を目指すため、理研−東海ゴム人間共存ロボット連携センター(RTC)を設立し、実用化のための研究開発を開始、2009年にRIBAを開発した。RIBAは、理研の制御、センサ、情報処理技術と東海ゴム工業の材料、構造設計技術を融合し、双腕型ロボットとして世界で初めて人間(61kg)を実際に抱き上げて移乗させることに成功した。しかし、介護施設で最も重労働である床上に寝た認知症患者などの抱き上げ移乗ができないこと、負荷重量が不十分であることなどの課題が残されていた。こうした課題を克服するため、研究グループは後継機の開発を続けてきた。
その結果、RIBA−IIには、姿勢を低くして床上に寝ている人を抱き上げるために、腰に2個の前後屈曲関節を設けることにより、床からの抱き上げとベッドからの抱き上げの両方ができるようになった。
さらに、モータの小型化と省電力化のために、腰関節に補償ばねを導入。その結果、無負荷で前方に屈曲するときはばねを引っ張る力を蓄積し、人を抱き上げるときはその復元力を利用することで、比較的小出力モータで人の抱き上げを可能にした。また、触覚センサとして新開発したオールゴムのSRセンサを採用して、柔軟性とセンシング精度の両立を実現した。
RIBA−IIは今後、東海ゴム工業の社会貢献活動を通して交流を深めてきた複数の介護施設の協力を得ながら引き続き研究開発を行い、有用性の実証と課題の抽出を進めていく。そして安全性、信頼性、操作性などを検証して、介護施設へのモニター使用を行い、早期の実用化を目指す。また、単なる移乗介助だけでなく、力制御による被介護者の機能回復のための部分介助や、リハビリテーション支援の応用研究も行っていく。
■関連記事
・理研、人を抱えることができる介護ロボット「リーバ」を開発
・医療・介護・生活支援のロボット開発センターが福岡県にオープン!