全国老人福祉施設協議会は、このほど、「特別養護老人ホームにおける認知症高齢者の原因疾患別アプローチとケアの在り方調査研究」を行い、その報告書を取りまとめた。
この調査は、特養における認知症の原因疾患の診断の有無、認知症ケアへの反映などについて実態を調べるとともに、医療、介護の両側面からそれぞれの果たすべき役割、機能について提言しよう、というもの。具体的には、特養を対象にした実態調査と、3つのモデル施設でも検証を行った。
このうち、実態調査の結果について紹介する。
調査は、230施設(調査対象600施設、回収率38.3%)から、1,143のサンプルを回収。各施設で、2010年9月1日を基点に、認知症日常生活自立度?以上の新規入所者5人をさかのぼって抽出している。
まず、認知症の日常生活自立度は、最も多いのが、日中を中心に日常生活に支障をきたすレベルである「自立度?a」で33.8%を占めた。続いて、自立度?(25.3%)、自立度?b(17.7%)、自立度?b(11.5%)の順。
認知症の診断の時期は、最も多い3割強が「時期不明」で、時期がわかっている場合でも「2004年以前」が2割と、時が経っている。直近2年(2010年、2009年)の診断は1割だった。
また、認知症の診断名は、「アルツハイマー型認知症」(32.5%)、脳血管性認知症(11.6%)など、原因疾患が特定されているのは46.5%と半数足らずで、原因疾患が特定されていない「認知症」が38.8%、「診断名なし、詳細不明」も4.4%あった。
ただし、脳画像診断が行われた人に限定すると、原因疾患が特定されていない「認知症」は24.8%と、少なかった。
さらに、直近1か月の間で、認知症の行動と心理症状がみられた人は86.0%。その内容(複数回答)はは、「介護への抵抗」が30.4%で最も多く、次いで、「徘徊」(25.3%)、「妄想」(24.7%)、「昼夜逆転」(22.8%)、「帰宅願望」(22.1%)と続いた。
自由記述のコメントでは、「診断材料が不足していてケア計画への反映が難しい」、「認知症との診断はついていないが、明らかに認知症と思われる症状があるため、プランにもあげている」など、認知症の診断があいまいだったり、実際の症状とギャップがあったりするため、ケアプランへの反映に戸惑うケースが少なくないことが浮き彫りになった。
■関連記事
・全国老施協、デイサービスセンター緊急調査の結果を公表
・全国老施協が、東北関東大地震への義援金を募集