2月23日、東京都社会福祉協議会センター部会主催のフォーラムの最後に行われたシンポジウムでは、会場から質問が上がった、「介護を行っている家族に対する支援」について、議論が交わされた。
まず、東村山市北部地域包括支援センターセンター長の鈴木博之氏は、「家族会を開催し、同じ悩みを抱えている人同士で話すことで、負担を軽減している」と説明。
八王子保険生活協同組合専務理事の大久保孝彦氏も、家族会を立ち上げたことを紹介したほか、これから計画している取り組みとして、「緊急のときのためのショートステイ」と、「介護をしている家族、介護を受けている人のための旅行会」を考えていることを話した。ショートステイについては、数ヶ月先まで予約が埋まっており、急ぎのときに使えないという悩みをよく聞く。そこで、有償のボランティア活動として、すでに現役から離れた看護師や介護士にも協力を得ながら準備中であるという。
一方、新宿区高齢者サービス課高齢者相談係高齢者相談係長の永田義弘氏は、新宿では、認知症の高齢者の介護をしている家族のために、「認知高齢者の介護者リフレッシュ等支援事業」を行っていることを紹介した。
これは、介護者の負担を軽減し、リフレッシュできるよう、見守りや話し相手などの支援を行うホームヘルパーを派遣するというもの。
このほか、いわゆる「宿泊デイ」に関する質問も上がった。
宿泊デイに関しては、まだ具体的な定義が確立されていないため、「正直なところよくわからないが」といった前置きの上で、それぞれのシンポジストが考えを語った。
大久保氏は、2010年9月に東京都福祉保険局が発表した緊急提言(「大都市の実態に即した介護保険制度のあり方等に関する緊急提言」)のなかで、都内の小規模多機能型居宅介護事業所における宿泊室の平均稼働率が約4割程度であると報告されていたことを紹介。
その上で、「6割余っているのであれば、社会資源として活用できないか。八王子ではダメだと言われたが、もっと弾力的に使えれば…」と提案した。
シンポジウムのコーディネーターを務めた、慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授の田中滋氏は、シンポジウムの最後、「(宿泊デイが)介護保険に組み込まれるかはまだわからないが、地域によって適したサービスが生まれるでしょう。『地域格差が生まれる』と問題視する人もいるが、地域格差は当たり前。先に適切な体制が整う地域があっても良い。良いほうへの地域格差は賛成です」と、締めくくった。
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