12月12日、高齢社会をよくする女性の会による歳末恒例「女たちの討ち入りシンポ」が、東京都港区で開催された。
「生活援助と軽度者を介護保険から外してはならない」と銘打つシンポジウムでは前半に当事者や会場からの意見を聴き、後半ではパネリストに自治体職員や厚生労働省官僚を迎えた。
シンポジウムの壇上、横浜市介護保険課長の松本均氏は、「この課題は、時間をかけて議論すべき。第5期のうちはまだ大丈夫だ」と、拙速な改正を戒めた。所沢市総合政策部参事の鏡諭氏は「介護の必要性に重度も軽度もない。生活援助を給付から外せば生活困難者が出るのは明らか」と発言した。
シンポジウムを協力開催する全国老人クラブ連合会の齋藤秀樹事務局長は、この話を聞き「生活援助と軽度者切りが起これば、セーフティネットワークが無い自治体の住民は生きていけない」と憂え、軽度者が軽度のまま長生きすることが困難になると指摘した。
一方、地域保健研究会会長の田中甲子氏からは、予防デイを利用しない要支援者を対象とした予防訪問介護の意義が紹介された。埼玉県和光市のモデル事業では、これらの対象者の3割にADL向上がみられるなど、軽度者へのサービス抑制に待ったをかける根拠が示された。
終盤で登壇した厚生労働省老健局振興課長の川又竹男氏は「高齢者の生活を全部、介護保険制度だけで支えられるものではない。財源不足も、狭い枠内だけで何とかしようとしても解決できない」と率直に話した。
その上で、介護保険財政を「皆さんが家計をやりくりする感覚と同じ」とたとえ、「厚生労働省は只今『ゲゲゲの女房』の心境でございまして……」と苦しさを明かすと会場に失笑がもれた。
シンポジウムの最後には、“討ち入り”にふさわしく勇猛な鉢巻き姿になった主催メンバーたちが壇上に揃い、太鼓が響くなか川又課長へ要望書が手渡された。内容は、生活援助と軽度者支援を介護保険から外さないことに加え、当事者の実態や思いを汲み合意のもとに議論を進めることなど。
会場に駆けつけた、介護を考える議員連盟の石毛鞘邇民主党議員、山崎摩耶同議員も最後に、「制度の検証はまだまだ足りていない。今後はよりオープンな形で行われてほしい」と、議論の透明性確保を強く求めた。