12月1日、「介護保険制度改正の焦点討議」と題し、来年の通常国会審議に向けた公開政策討論会が東京都千代田区で開催された。
主催は、「介護保険を持続・発展させる1000万人の輪」。当事者・事業者・有識者により構成される同団体は、政権交代前の一昨年より、時の与野党の政策担当者を招いて同様の討論会を継続開催し、介護保険制度の向かうべき方向性を市民の目から、政局とともに考えてきた。
この日の壇上には、共同代表を務める白澤政和氏(大阪市立大学大学院教授)、高見国生氏(認知症の人と家族の会代表理事)、樋口恵子氏(高齢社会をよくする女性の会)が出揃い、結城康博氏(淑徳大学准教授)のコーディネートのもと問題提起を行った。
討論は大まかに、
・ケアプランの1割自己負担化、区分支給限度額の今後
・24時間巡回、宿泊付デイなど新たな在宅介護支援の方向性
・軽度者に対する生活援助切り捨ての是非
の3つの提起を中心に、要介護認定のあり方、認知症ケア、財源論や処遇改善といった関連議題を含んで進行した。
まず、ケアマネジメント研究で知られる白澤氏、結城氏が、紛糾するケアプラン有料化について6政党の意見を聴いた。
自民党の田村憲久氏(党厚生労働部会長)は開口一番、「これこそ過去最悪の改正。有料化すればサービスの入口で入れなくなる人が増えるのは明らか」と反対する立場をとった。
公明党の古屋範子氏(党政務調査会副会長)、共産党の高橋千鶴子氏(党国会議員団厚生労働部会長)、みんなの党の川田龍平氏(党政策調査会長代理)もほぼ同様の意見。
社会民主党の阿部知子氏(党政策審議会会長)は、「1人ひとりのパーソナルサポートを行うケアマネジャーの役割を認識しないまま、財源の観点のみからの有料化などありえない話」と述べた。
民主党の郡和子氏(党政策調査会副会長)は、こうした野党の怒りに聞き入っていたが、最後に「超党派で一致をみて嬉しく思う。介護支援のかなめであるケアマネジメントを、自己負担化反対の立場で守っていきましょう」と呼びかけた。
次に高見氏が介護当事者を代弁する立場から、来年度の事業化が見込まれる24時間巡回訪問介護や宿泊付デイサービスの是非を問いかけた。「介護保険は今なお身体介護モデル寄りで、半数に上る認知症の介護には合わない部分が目立つ。24時間巡回もそれに近い」と指摘。「1000万人の輪」のなかには、このように懐疑的ではないにせよ慎重に見守る立場の団体が多い。
前回の報酬改定では夜間訪問介護が伸びなかったことも背景に、自民党は「モデル事業を注視して本当に実現可能か検証したい」とした。
宿泊付デイについては「宅老所のような先行モデルは、ケアラーのケアも担っている」と民主党がレスパイトの意義を強調した。
対して共産党は「制度外で自主的に地域ニーズに応えてきた事業所と、1日800円で雑魚寝させる事業所は同一視できない。24時間巡回にしても、北海道のように規模が大きいとニーズにそぐわない側面もある」 と、現実的な視点のもとでの在宅介護支援拡充を訴えた。
――レポート2に続く
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