痛みや吐き気、呼吸困難など、がんのターミナル期の患者に降りかかる様々な身体の苦痛。その苦痛も、自宅などで適切な医療と介護を受けて過ごせば、入院し続けるよりも軽くなる可能性があることが、国立がん研究センター(国がん)の調査で示された。その一方、3割程度のがん患者は、死亡する1カ月前、なんらかの苦痛を感じて過ごしている結果も出ており、今後、ターミナル期のがん患者に対する緩和ケアや治療の質をさらに改善する必要があることも改めて示された。
国がんでは2018年2月から3月、患者の遺族に対する調査を実施。具体的には「がん」「心疾患」「肺炎」「脳血管疾患」「腎不全」が主な原因で16年に亡くなった患者の遺族4812人を調査。2295人から有効回答を得た。このうち、がん患者の遺族は1630人だった。
死亡したがん患者の身体の苦痛についての質問では、48.1%の遺族は、苦痛が少なく過ごしていたと回答。一方、29.0%の遺族は苦痛があったと答えた。どちらとも言えないは12.5%、無回答は10.4%だった。特に死亡する一週間前、強い痛みに苦しんでいたと思われる患者(※)は27.5%いた。
この結果について国がんでは、「がん対策基本法の策定から施策としてがん患者への苦痛緩和が推進されてきたが、いまだ多くのがん患者が苦痛を抱えており、治療やケアの質の改善が必要であることが示唆された」としている。
また、療養していた場所別で分析し直したところ、「病院」の場合、がん患者が苦痛が少なく過ごしていたと答えた遺族は38.0%だったが、「施設・その他」の場合は59.6%、「自宅」の場合は49.0%となり、自宅などで過ごしていた方が苦痛は和らぐ傾向が示された。場所別の結果について国がんでは、対象数が限られていることなどの理由から「参考値とすべき」としながらも「症状が安定している人ほど、施設や自宅での療養の可能性が高まることも考えられる」としている。
(※)痛みが「ひどい」や「とてもひどい」と答えた遺族の合計。