人生の最終段階に向け、医療・ケアチームが、患者やその家族らと治療やケアの方針を繰り返し話し合う「アドバンス・ケア・プランニング」(ACP)。一般の国民に伝わりにくいとの声を受け、厚生労働省が募集していた愛称が「人生会議」に決まった。同省では、「いいみとり、みとられ」の語呂合わせから、11月30日を「人生会議の日」と定め、今後周知するとしている。
発表会で「人生会議」のパネルを持つ須藤さん=右から2人目
8月13日からの1カ月間、厚労省が愛称を募集したところ、1073件の応募があった。有識者らによる選考委員会で検討した結果、聖隷浜松病院(浜松市)の看護師、須藤麻友さんが考案した「人生会議」が選ばれた。
同省側は選定理由として、「意味が明確な単語の組み合わせにより、日常会話に浸透していくことが期待できる」「家族など信頼できる人たちと輪を囲んで話し合う、というイメージが湧く」の2点を挙げた。
■「食卓の場で話せるぐらい浸透してほしい」―須藤さん
病院の集中治療室(ICU)で働く須藤さんは日々、重症な患者と向き合っている。このほど同省内で開かれた発表会で須藤さんは、「家族や介護者になる方の人生にも大きく影響することなので、日本中の方々が食卓の場など、身近な場面で話せるぐらいACPが浸透してほしいと強く思った」と、名前に込めた思いを明かした。
須藤さんはまた、「事故などで急に自分が意思表示できなくなるかもしれない。その時に周りの大事な人たちが混乱しないようにということも想定して、元気なうちから、もしもの時のことについて考えることが根付き、人々が自分の望む最期を迎えられるようになってほしい」とも話した。
■「繰り返し話し合う過程全体が大事」―選考委の紅谷さん
選考委員の一人で在宅医の紅谷浩之さん(オレンジホームケアクリニック代表)は、自分の意思を明文化しておく事前指示書やエンディングノートなどについて、「もし、これについて書いていない、決めていなかったという時に、どうしていいのか分からなくなってしまうという問題がある」と指摘。その上で、「これからは、事前指示というやり方から人生会議に変わっていく方がいいのではないか。共有する時間や雰囲気を含めて、繰り返し話し合う過程全体が大事だ」と述べた。
厚労省はこの春、延命治療や看取りなどの方針を決める際の手順を定めたガイドライン(指針)を約11年ぶりに改訂。指針では、患者本人やその家族の意思を確認するチームの一員として、ケアマネジャーも参加することが望ましいとしている。