日常生活に支障のない健康な高齢者でも、同居する家族以外の人との交流が極端に少なく、買い物などの外出頻度が非常に低い状況が重なると、死亡するリスクは、どちらも該当しない高齢者に比べて2.2倍高まることが、東京都健康長寿医療センター研究所の研究グループの分析で分かった。研究結果は、国際雑誌「International psychogeriatric」のオンライン版に掲載された。
同センターでは2008年から14年、埼玉県和光市に住む65歳以上の市民で、公共交通機関の利用や買い物など、日常生活動作に問題のない1023人を対象に郵送で調査を実施。同居する家族以外とのコミュニケーションや外出の頻度の有無によって、参加者を4つのグループに分けた上で、6年後の生存状況を調べた。
その結果、6年後までに全体で65人が死亡し、1年当たりの死亡者数は10.6人だった。これをグループ別で見ると、同居家族以外と顔を合せたり、電話やメールなどで連絡したりする頻度が両方を合わせても「週1回未満」で、買い物や散歩などの外出の回数が「2、3日に1回程度以下」の状況が重なっていたグループでは、どちらも該当していないグループと比べ、6年後の死亡率が2.2倍高く、統計学的な有意差が見られた。片方を満たしているグループとの間に有意差は見られなかった。
同グループでは、「これまでは、社会的な孤立と閉じこもりの影響のどちらかに着目した研究が行われてきた。今回の研究は、どちらか一方が健康を脅かすのではなく、両方が重なった状態が問題であることを示唆している」と指摘し、「『交流なき外出』と『外出なき交流』の両者に気を付ける必要がある」としている。