薬を包装ごと飲みこんでしまい、喉や食道などを傷つけたという事故が、危害情報システムにこれまでに86件寄せられており、厚生労働省や国民生活センターで注意を呼びかけている。
薬の包装は、プラスチックにアルミなどを貼り付けたPTP包装シートと呼ばれるものが主流である。1996年以前のPTP包装は、縦横にそれぞれミシン目が入って、1錠ずつ切り離せる構造だったが、錠剤と一緒にPTP包装を誤飲してしまう事故が頻発したため、1錠ずつに切り離せないようにミシン目を一方向のみとし、誤飲の注意表示を増やすなどの対策がとられた。しかし、その後も依然として誤飲事故は後を絶たない。
1錠単位に切り離した薬をPTP包装のまま飲み込んでしまうと、自力で取り出すことは難しく、X線写真にも写りにくいため、内視鏡で取り出すことになり、身体への負担も大きい。そこで、被害の未然防止・拡大防止のため、あらためて消費者への注意を喚起する。
主な相談事例として、1)処方された薬を包装ごと飲みこんだ。喉が痛く救急車で病院に行ったが、喉仏の裏側に薬が引っかかってレントゲンでは見つからず、数時間かけて内視鏡で取り出した。 2)貧血検査のため内視鏡を飲んだところ、十二指腸球部にPTP包装が刺さっていた。取り出したが穿孔(せんこう)しており、手術した。
国民生活センターでは、薬の誤嚥の問題点として、以下を挙げている。
・現在は薬を1錠ずつに切り離せない構造が主流となっているが、携帯時などに消費者がハサミで1錠分に切り離してしまい、これが誤飲しやすいサイズであるため、事故につながる。
・PTP包装は切り離すと角が鋭利になるため、人体内部を傷つけることがあり、部位によっては穿孔するおそれがある。
・痛みなどの症状が表れるまで誤飲したことに気付きにくい。また、誤飲を自覚せず体調不良などで検査しても、PTP包装の素材はX線を透過してしまうため、発見されにくい。発見が遅れると重症化するおそれもある。
・高齢者で事故が目立つ現状などから見て、消費者側が誤飲を防ぐには限度があると思われる。
・製薬業者は過去から、誤飲しても体内で溶ける素材やX線を透過しない素材などを含めた製品側からの安全策の研究を進めているようであるが、薬の品質を保ちつつ事故防止につながる有効な手段は見つかっていないようである。
このほか、高齢になると白内障などでモノが見えにくく、薬の取扱が困難になる、認知症の人はさらに飲んでいいものとダメなものの判別がつかなくなるなども、こうした事故につながると思われる。
消費者へのアドバイスとしては、
1)PTP包装には誤飲防止のために横か縦の一方向にのみミシン目が入っているので、1錠ずつに切らない。
2)高齢者の事故が目立つので、家族など周りにいる人も気を配る。
3)PTP包装を飲み込んだかもしれないと思ったら、ただちに診察を受ける。
4)1回分ずつの薬を袋にまとめて入れる「一包化」を活用する。
4)に関しては、調剤薬局に相談すれば、複数の異なる薬をPTP包装から取り出して一包化してくれるため、服薬の必要な高齢者のいる家庭では、早急に利用することをおすすめしたい。