日本精神神経学会は2月3日、警察庁交通局の道路交通法改正試案に対して反対する意見書を提出したことを明らかにした。
警視庁によると、高齢運転者、とりわけ75歳以上で認知機能が低下しているドライバーは、機能低下していないドライバーと比べて、信号無視や一時不停止等の危険な行動をとる割合が高く、交通事故を起こしやすいという。
そのため、道路交通法改正試案では、高齢者の認知機能チェックを強化するための仕組みをつくろうとしているところだ。
しかし同学会は、特定の病名を挙げて運転免許の制限を行うことは、病者への差別であるという理由で強く反発。
また、認知症と危険な運転との因果関係が明らかでないこと、診断をする医師の確保がなされていないこと、地方においては自家用車が生活の重要な交通手段であることなどから、この改正試案は実効性が低いと指摘している。
警視庁が公安委員会の権限として改正試案に盛り込んでいる内容は、以下のとおり。
■75歳以上の運転免許を受けた者で認知機能が低下した場合に行われやすい違反行為をしたものに対し、臨時に認知機能検査を行う。
■認知機能が低下しているおそれがあると判断された者等に対して、臨時に高齢者講習を行う。
■認知機能検査において認知症のおそれがあると判断された者が実際に認知症に該当しているか否かを明らかにするため、その者の交通違反の状況にかかわらず、臨時に適性検査(専門医による診断)を行い、または医師の診断書を提出すべき旨を命ずる。
■臨時認知機能検査や臨時高齢者講習の受検・受講を担保するため、臨時認知機能検査の対象となった者が当該検査を受検せず、または臨時高齢者講習の対象となった者が当該講習を受講しなかった場合には、免許を取り消し、または免許の効力を停止することができることとする。
同学会は、今回の改正試案には問題があるため、改正見送りと、関係者による検討会開催を求めている。
◎公益社団法人 日本精神神経学会
https://www.jspn.or.jp/index.shtml