厚生労働省は、4月26日、「平成24年度 仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究事業」の報告書を公表した。
同調査は、就労者の介護の実態や介護に直面する可能性について、さらに介護制度や両立支援制度の利用状況の実態などを把握することを目的に実施したもの。
また、離職者についても就労者と同様に調査することで、離職した具体的な状況を明らかにし、仕事を継続するために必要な企業の取り組みを把握することを目的としている。
なお、同調査で用いた「手助・介護」とは、排泄や入浴などの「身体介助」、施設や遠距離での「介護」に加え、定期的な声かけ(見守り)、食事の支度や掃除、洗濯などの家事、通院の送迎や外出の手助け、入退院の手続きや金銭の管理などの「手助け」も含まれる。
また、離職者については介護による離職する前の状況について調査した。
【調査の概要】
■調査の対象:40歳代~50歳代の就労者の男性(正社員)1,000 人、女性(正社員)1,000 人
40歳代~50歳代の介護による離職者の男女(離職前は正社員)1,000 人(有効回答994人)
■調査の方法:ネット調査会社の登録モニターを利用したウェブアンケート調査
主な調査の結果は以下の通り。
■離職者の半数以上が両親と同居している
・就労者、離職者ともに「一般社員(役職なし)」の割合が53.3%と47.9%で最も高かった。
・就労者、離職者ともに、同居している家族が「配偶者」である割合は59.4%、52.9%だった。ただし「回答者の両親」との同居が就労者では27.4%だったが、離職者では52.0%だった。
・手助・介護が必要な親の数について、就労者では「0人」が71.3%、次いで「1人」が23.5%、離職者では「1 人」が79.1%、次いで「2人」が18.4%だった。
・手助・介護が必要な親の主な生活の場について、就労者、離職者ともに「回答者の自宅」「要介護者の自宅」と回答した割合が高かった。また、回答者の自宅以外(要介護者の自宅など)を生活の場とする親について、自宅からの距離を訊ねたところ、就労者、離職者ともに「片道30 分未満」と近居で手助・介護している場合が多いことがうかがえた。
・手助・介護が必要な親の認知症の有無については、就労者、離職者ともに「認知症ではない」と回答した割合が高く、主に「訪問系サービス」「通所系サービス」を利用していた。
■離職者の3割が自ら身体介護を行っている
・手助・介護が必要な親がいる者のうち、回答者自身が手助・介護を担っている親の数について、就労者では「0人」が47.9%、次いで「1人」が45.9%だったが、離職者では「1人」が72.3%、次いで、「2人」が11.8%だった。
・担っている手助・介護の内容については、就労者では「入退院の手続き」が49.4%、次いで「通院の送迎や外出の手助」が41.8%だった。離職者では「入退院の手続き」が65.0%、次いで「ちょっとした買い物やゴミ出し」が64.3%だった。
なお、「排泄や入浴などの身体介護」については、就労者が6.8%だったが、離職者は30.9%で、離職者では身体介護を含む幅広い手助・介護を自ら行っている状況がうかがえた。
・手助・介護を担っている頻度については、就労者、離職者ともに「ほぼ毎日」と回答した割合が高かった。
■就労者の約48%がケアマネジャーに相談
・仕事と手助・介護の両立に対する不安感について、不安を感じている(非常に不安を感じる、不安を感じているの合計)と回答した割合は、就労者、離職者のいずれも8割前後だった。
・手助・介護について相談した人について、手助・介護を担っている就労者では「ケアマネジャー」が48.2%、最も助けられた人は、「ケアマネジャー」(31.1%)だった。
一方、離職者の場合、相談した人は「家族・親族」が54.7%、最も助けられた人は「家族・親族」(30.1%)で、就労者は家族以外のケアマネジャーなどに相談し、手助・介護を行っている状況がみられた。
・上司や同僚に知られることの抵抗感について、手助・介護を担っている就労者では「抵抗がない」が47.0%、離職者においても「抵抗がない」が30.3%だった。
■手助・介護のために制度を利用したのは5割以下
・手助・介護のために利用した制度について、就労者、離職者ともに「利用していない」が51.0%、47.6%と最も高く、利用した制度では、「有給休暇(年次有給休暇、積立年次有給休暇、その他会社独自の有給休暇制度をふくむ)」の割合が高かった。
・介護休業制度の利用目的としては、就労者では「入退院の手続き」が46.2%(6件)と最も高い割合だった。一方、離職者では「排泄や入浴などの身体介護」が53.8%(49件)と最も高い割合で、介護休業中に自ら介護を担っている状況がうかがえた。
・勤務先の制度を利用しなかった理由について、就労者、離職者ともに、「自分の仕事を代わってくれる人がいないため」が21.9%、20.5%を占めており、就労者は「家族の理解・協力が十分得られたため」と回答した割合が20.3%だった。なお、介護休業制度を利用しなかった理由について、就労者では「長期間、休業する必要がなかったため」が最も高い割合(31.5%)だった。
■介護離職で精神的・肉体的な負担が増加
・手助・介護を機に仕事を辞めた理由としては、「仕事と手助・介護の両立が難しい職場だったため」と回答した割合が、男女ともに最も高く(62.1%、62.7%)、手助・介護を機に仕事を辞めた時の就業継続の意向は、男女ともに「続けたかった」が最も高い割合(56.0%、55.7%)だった。
・また、手助・介護を機に仕事を辞めてからの変化について、精神面の負担が増したと回答した割合が男女ともに6割を超えており、肉体面では54.1%、59.5%、経済面は76.6%、73.1%だった。
◎厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/
◎「平成24年度 仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究事業」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/dl/h24_itakuchousa00.pdf
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