「認知症の人のターミナル医療・ケア研究会」は、9月2日、東京都内にて「認知症の終末期をかんがえるフォーラム2012」を開催した。
後半のパネルディスカッションでは、「認知症の人の自分らしい最期をどうサポートするか?」のテーマで、さまざまな立場のパネリストが問題提起を行った。
まず、司会を務めた社会福祉法人サン理事長の西村美智代氏より、胃ろうを行った認知症患者の家族33人への面接調査の報告がなされ、胃ろうを行うかどうかを聞かれた時、「他の選択肢は示されなかった」と「1種類しか示されなかった」は約64%にのぼった。胃ろうを行った意思決定についての質問では、「結果的によかった」と答えた人が60%、「良かったか良くないか判断に迷う」は26.7%だが、「本人にとって最善だと思うか」では「思う」が50%、「判断しがたい」が38.5%で、家族の心の揺れが感じられる結果となった。
また、「本人にとって最善とは何か」という設問に回答したのは33人中16人に過ぎず、「言語化しにくい想い、意思決定のむずかしさが反映されていると言えます」(西村氏)。
続いてディスカッションでは、パネリストそれぞれが認知症の終末期への関わりについて語り、胃ろうに代表される終末期の問題に言及した。以下にその要旨を紹介する。
認知症の義母を介護した経験を持つ長寿社会開発センター事務局長の石黒秀喜氏は、「認知症の人が終末期にたどりつくまでは長い期間介護するもの。よい介護をすることが終末期ケアにおいてもポイントになる」と述べ、自身が作成した「上手に老いるための自己点検ノート」を紹介した。意思表明ができなくなった時に備え、ケアを受けるための希望などを記すもので、終末期の問題は認知症ケアと連続して考えるものいう提案が感じられた。
山形県立保健医療大学看護学科教授の小澤芳子氏は、「自分で意思表示をしておくと医療の現場も混乱せず、家族の葛藤もないと思う」としながら、終末期の現状として、医師が胃ろう造設について十分な説明をしているのか、家族に早急に判断を求めることが多いのではないかと述べた。「本当に胃ろうをする状況にあるのか、嚥下の機能強化などの手段はないのかという疑問が生まれることもある」との指摘は、先の調査結果と重なる部分も多い。
10年前からグループホームを主宰する武田純子氏(ライフアート代表取締役社長、看護師)。グループホームでは、医療行為や延命処置を行わずに終末期を支えているが、段階ごとに病院での医療行為を希望するかどうかを本人や家族に確認している。家族との話し合いでは判断材料となる情報を提供すること、キーパーソンではなく家族全員との話し合いを重視しているそうで、「延命治療を希望していなかった家族が、最後の段になって『どんな延命治療をしても、長く生きてほしい』と言うことも。家族の揺れ動く心も大事にしていきたい」とのリアルな意見が印象に残った。
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